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第21話 「しんどそうだから記憶消してやりたいとは思ってるよ

「さっきのってどうやったの。ほら、服とか髪とか乾かしたあれ」  少女を村に送って帰ってきたヤンは、開口一番そう訊いてきた。 「どうって。風と炎の術の応用。それほど難しくはない」 「便利だなー。一家にひとり、お前がいてほしい感じ」 「なんで」 「雪が長いと困る家多いんだよ。畑も雪害でだめになっちまうから。ほんと、人のためにある魔術だよな。新術ってやつは」  心底焦がれるようなその言い方に胸がひりついた。  シリルだって少し前まではそう思っていたのだから。でもそんな台詞、聞きたくない。 「隠れて暮らしてるって言ってたわりに、ふもとの村と交流あるんだ? 魔術師のくせに」 「村の人は俺が魔術師だなんて知らねえよ。仮に気づかれたとしても記憶を消す術を使うから平気。あんまり使いたくはないけどな」  だるそうに言いながら、カップに注いだお茶を飲む。彼に倣うようにシリルも自分の前に置かれたカップに両手を伸ばす。  じわりと掌に沁みる熱に心が緩んだ。 「俺の記憶も消せばいいのに。そうしたらここから追い出せる」  ヤンはカップを唇に当てたまま、感情の読めない目でこちらを眺めてくる。あまりにも黙っているので苛ついて睨むと、なぜかふっと微笑まれた。 「追い出したいとかはないけど、しんどそうだから記憶消してやりたいとは思ってるよ」 「は? あんた、なに言ってんの」 「お前、毎晩うなされて謝ってるから。アリス、ごめん、ごめんって。気づいてなかった?」  ぎしり、と胸が激しく軋んだ。  そんなこと、言われるまでもなかった。なぜなら目覚めた自分の舌に、ごめん、はいつも苦い痛みとして張りついていたから。けれどそんなこと、指摘されたくない。  可哀想なもののように言われたくなんてない。  荒々しくカップの中身を飲み干し立ち上がる。これ以上話すこともない。術を試すのはまたにしてやる。  慌ただしく地下室へと戻ろうとしたが、そこでシリルは足を止めた。 「……なあ」  ヤンの手が手首に絡みついたために。

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