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第25話 「お前、俺に抱かれても、平気?」

 地の底よりなお深い場所からやっとのことで這い上がってきたみたいにヤンが囁く。 「古術ってそういうものなんだ。道理も人の意志も魂も捻じ曲げる。だから俺はこんなもの、俺の代で終わりにすればいいって思ってたんだよ。だってそうだろ? 俺は間違いなくエドガーを殺した」 「それは、あんたのせいじゃ……」  言いかけてシリルは思い止まる。多分、どれだけ言ったとしてもヤンの心は慰めを受け取りはしない。事実、ヤンはシリルが発しようとした言葉を悟ったようにゆらりと首を振った。 「俺のせいだから。というか、俺のせいだと心に刻んでないとだめだと思う」  覚悟を滲ませた彼の顔をシリルは見つめる。彼の気持ちは十分伝わってきたが、それでもわからないことがまだあった。 「俺だって道理を曲げたことをしようとしてる。なのに、どうして協力するなんて?」 「死んだ妹に会いたいって思いは、それほど道理に外れてはないさ。だから」  言葉が途切れ、テーブル越しにまっすぐな眼差しが注がれる。戸惑うシリルにヤンは密やかな声で告げた。 「使えるようにしてやるよ。闇魔術師の血にだけある刻印。どうする? 受け取る?」  ……問われるまでもなかった。覚悟はとうに決まっていたのだから。  ただ、妹のためだけに術を使うという約束を守れるかと言われれば正直、わからなかった。でもそれを言ったらこの男は力をくれないのだろう。  だとするなら、することはひとつだけだ。 「わかった。アリスのためにだけ使う。だから、お願い」  頭を下げると、うん、と小さく返事があった。が、それだけで続く言葉がない。もしや、嘘をついているのがばれたのだろうか、と不安からそろそろと顔を上げると、ヤンは難しい顔をして再び窓の外を見ていた。雪原を染めるのは夕日の橙と宵の青。その二色がヤンの黒い瞳の中で溶けて揺れていた。 「一個、確認させて」 「な、なに」  彼の瞳の中の刹那の輝きに目が吸い寄せられ、わずかに返事が遅れた。慌てるシリルを見ることもなく、ヤンは言葉を継ぐ。 「お前、俺に抱かれても、平気?」

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