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第46話 「こう言ったら好きって言ってくれる?」

 抱え込んだ腕が震える。その腕を離すまいとシリルは両腕に力を込める。 「嘘なのだろうけど、それでも俺は思ってしまった。本心ならいいのにって」  すっと彼が息を吸う。その彼の腕に再び顔を伏せ、シリルは呟く。 「誰を踏みつけにしたっていいと思ってた。妹を殺した世界に復讐できるなら、誰のことだってどうでもよかった。どうでも、よかったはず、なのに、俺はあんたが俺のせいで痛みを感じていることが嫌だって思ってしまう」  目が熱い。ぎゅうっと彼の外套に瞼を押し当てると、彼の手によって後ろ頭がそっと撫でられた。優しすぎる手つきに耐え切れずシリルは片手を上げて頭を撫でる手を掴む。鱗が光る手の甲がひやりと掌を凍らせる。その冷たさが胸の中で愛しさに変わる音を聞いた気がした。 「恩義や憧れだけでここまでしないで。優しく、しないで」  彼の手にぎゅっと顔を押しつけて呻く。はらっと落ちた涙が彼の鱗を濡らす。光るそれに唇をそっと寄せた。 「好きに、させないで」  突然、彼が手を振り解いた。乱暴なその手の動きから、やめろ、と突き飛ばされるのを覚悟した。だって、彼がこんな体になったのはこの自分のせいだから。  けれど、突き放すはずの手はなぜかシリルの肩を強く掴んだ。 「恩義や憧れだけじゃねえよ、馬鹿」  ぐい、と荒っぽく引き寄せられて体が彼の胸に沈む。 「ほんとお前ときたら、憧れ全部吹っ飛ばすくらい生意気だわ、口悪いわ、自分勝手だわ」  低い声が耳朶に沁みこんでくる。身じろぎする体を強い力が胸板に縫い留める。  ああ、だめだ。もうここから動けない。動きたく、ない。 「なのに……素直で可愛い。俺ときたらそういうお前が好きみたいでさ。困るよな」  服越しに彼の心臓の音がした。彼の体を蝕んでいる呪いが心臓に及んでいないことに心から感謝し、頬を摺り寄せるようにしてその音を聴き続ける。なあ、と呼びかける声が心音に緩やかに重なった。 「好きにさせないでってそれ、あとどれくらいで好きって言ってもらえるやつ?」 「……し、らない」  そんな恥ずかしいこと言えるわけがない。首を振ると、彼が頭の上で笑う気配がした。その様子に安堵しながらも、胸が苦しくなった。自身の胸の辺りの生地を掴んだとき、じゃあ、と彼の指がシリルの髪をまた撫でた。 「こう言ったら好きって言ってくれる?」  なに、と思わず顔を上げた。そのシリルの顔につと顔が寄せられる。ほんの少し頷いたらもう触れてしまう、と思った気持ちを読んだように、さらっと掠るだけの口づけをされた。 「愛してる」

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