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【八】青羽―初体験① ※R18
来訪者は透の恋人ではなく、ヤクザの集団だった……。しかも、明らかに透は茂山さんを毛嫌いしていた。あれは、父さんに返済を迫った街金の若い男よりも、何倍もヤバそうな人間だった。きっとハイエナや害虫を手なずけて生を搾り取る人種だろう。一般人は決して関わってはならない世界は、夜の歓楽街に扉がある。父さんは返済の利息が払えないと、俺に内緒で【荷物】を届けに県外へ出掛ける事がしばしばあった。それがパチモンの海外ブランド品か、他の物なのか中身は知らない。子供の直感は、非合法がバレたら生活が崩壊する恐怖しか掴めなかった。
『青羽、俺だってあいつを責められる生き方をしてきたわけじゃないんだ。沈黙が幸福を守ることだってあるんだよ――』
父さんはある意味、名言を遺したと言える。
鋭い目つきの集団は、俺まで敵か否かを瞬時に分析していた。下された判断は、否。つまりは彼らにとって利益になる人間である、と渡された名刺が証明していた。斜めに傾けると銀箔の龍が浮き出る凝った作りだ。ラーメン一杯より値段が張りそうだな。いや。下手すれば、これを持っているだけでチンピラは俺を避けていく気がする。まあ、これをどうこうする気はないけど。所詮は虎の威を借る狐なのだ。透は狐に豹変して欲しくはないだろう。彼が俺に求めているのは、恐らく性欲と誠実だ。
セフレにするつもりかと軽く考えていたけれど、資格を取れと真剣にアドバイスをする赤毛のヴァイキングに正直戸惑っていた。俺の人生にすがる人間はいたけれど、将来を指南する人間は皆無だった。それだけで充分、彼は尊敬に値する。俺は奈々の将来を心配はしても、幸せにはできなかった――。
物思いに耽りながら、浴室で準備をした。透は俺を欲している。買い出しでしっかり準備用のグッズやローションも手に入れて、なんとかスマホに載っているミッションをクリアした。妄想と現実の溝が深すぎる……。慣れれば快楽を得ることがあるのだろうか。
小難しい考えは零時過ぎに帰宅した男の表情で停止した。彼は、そう、俺以上に面倒な世界に生きている。そして微笑んだ口元には疲労のシワが刻まれ、翡翠の瞳は熱く潤んでいた。いいじゃないか。俺は野性的な赤毛の海賊が好きだ。求められるがまま、流されて生きるのもまた一興だ。
靴を脱いだ透はバスローブ姿の俺をかき抱き、うなじを甘噛みしてきた。獣か。
「お帰り」
「風呂に入ったのか」
「うん。俺、準備してみた」
「準備……」
「俺が欲しいんだろ」
足が浮き、口からの酸素が供給停止した。舌が絡み合い、両手が互いの身体を這い回る。腹をつつく硬い情熱は、布地が邪魔をして直に触れあえずにいきり勃つばかりだ。バスローブの俺は全裸に近いが、ハッハと息を切らして唸る透が辛そうだ。ベルトのバックルに指先を伸ばしたら、その手を掴まれてしまった。
「ベッドに行こう。青羽としっかり抱き合いたいんだ」
チュ。手の甲に唇を落とす仕草が、なんだか甲冑の騎士みたいで恥ずかしい。俺は乙女か。
「格好良すぎだろ」
「青羽も可愛いよ」
慣れつつあるお世辞に、どう返事したもんだろと迷う。
「ふっ、その顔。信じてないな」
ガチャリ。
寝室はエアコンで温め、ベッドサイドのランプを灯しておいた。東北の師走は室内が一桁になるので、裸のレスリングには不向きだ。壁際のソファーにスーツが投げられる間に羽毛布団をはいで、ガウンを脱いだ。股間の雄が興奮と期待で勃起しているが、相手はどうなんだ?
「すごい胸筋だよね。羨ましいなあ。俺もこうなりたい」
世の女性がむしゃぶりつきそうな張りのある筋肉が現れた。両手で揉みさすると透がクックと笑った。
「鍛えれば誰だってこうなるさ。一緒にトレーニングしよう」
ベッドに上り、枕に頭を沈める間もなく赤い獣が覆い被さってきた。俺との身長差は約三十センチだが筋肉量が圧倒的に違う。たくましい上腕二頭筋は俺の二倍以上だし、毛むくじゃらの大腿だって同様だ。息は荒いのに、押しつぶさないように我慢して俺の舌を噛んで、吸って、味わっている。溢れる唾液を舐めとった彼は、耳朶や首に狙いを定めた。
「ああぁ……」
クネクネねちねちと動く舌は淫らで気持ちいい……。我知らず、与えられる快感に声を漏らしてしまった。お返しにと太腿に押しつけられる彼の熱い男根に手を伸ばし、上下に扱いてみた。
カリッ。
「ひぁっ」
肉厚な舌で薄茶色の乳輪に円を描き、硬く息づく先端をかじる赤毛のヴァイキング。肩まで伸びる長髪と、仙人然とした髭が俺の腹筋をくすぐる。柔らかくも赤くもない小さな胸が、左右とも唾液に色塗られていく。熱い息づかいと微かに軋むベッドのスプリングの音だけが寝室に響いた。透が身体を離したので、勃起から手が外れてしまったぞ。
「青羽、足を大きく開いて」
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