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拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

 いよいよ放課後になり、好きな人ができたのか、それともラブレターの送り主が自分だとバレたのかと、これからされるだろう話に怯えながら大真は慧司と家へと向かった。  玄関に入ると、家の静かさがいつもより気になった。いつもなら親がいるとうざったいのに、今日は誰かいてほしいと、そんな気持ちになる。  大真は、玄関に入ってすぐ横の棚上に飾られていた置き物を指さした。  旅行先で親が買った、犬でも猫でもない、よく分からない動物のその置き物は、ちょっとした話題になるかもしれない。 「これなんかキモいよな〜」  靴を脱ぎながらそう言った大真に対し、慧司は「確かに変だな」の一言で終わらせた。   「早くお前の部屋行こうぜ」 「……うん」  震える足でゆっくり階段を上がる大真に、慧司は「早くしろ」と急かすように声をかけた。  二階に上がり、部屋のドアに手をかけたところで、大真は最近まともに片付けていなかったことを思い出した。  部屋の中央に敷いているカーペットに、教材やら漫画だけではなく、脱いだ服も広げたままだったかもしれない。 「片付けるからちょっと待って」 「お前の部屋はいつも汚いし、今さらだろ」 「はあ!?」  なかなかドアを開けない大真を押しのけ、慧司は先に部屋に入った。 「ちょ……!」  開けっぱなしだったカーテンからは西日が差し込んでいて、大真は思わず目を細めた。  カーテンを閉め、ようやく部屋の中に視線を戻すと、やっぱり色々なものが散乱していた。 「いつもより酷いな」 「だから待ってって言ったじゃん」  大真は床に広げたままのそれらを慌ててかき集め、教材や漫画はとりあえず棚上に、脱いだ服はクローゼットの中に押し込んだ。   「ま、さっきよりはマシになったんじゃね?」 「いちいち言うなよ」  ようやくスペースができたなと、慧司は大真を揶揄いながら、肩にかけていた鞄を床に置いた。  ドンッと鈍い音がする。 (今日って、そんなに重い教科書あったっけ?)  さっきまで話の内容を気にしていた大真が、その音に気を取られている少しの間に、慧司は鞄から分厚い雑誌を取り出した。  勢いよく机に置かれた雑誌が、またドンッと鈍い音を立て、さっきの音の正体はこれだったと分かった。 「何これ」 「見て分からない? 大学の情報誌」 「ほえ?」 (今から大学の話をするってこと?)  構えていた内容とは全く違う話で、大真は拍子抜けした。 「話って、まさかこれ? 大学?」 「当たり前だろ。そろそろ進路決めないといけないし。お前はどこにするんだよ」  これまで、慧司と大真は将来の夢について話したことさえ一度もなかった。それなのにここにきて、急に進路の話をするなんて。  雑誌の表紙にあった、“行きたい大学がこれ一冊で決まる!”“共通テストを乗り切るには”“不安なときの対処法”の文字が、一気に大真の視界に入ってきた。  これを今から慧司と二人で読むのかと、大真はよく分からない状況に戸惑った。

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