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背景、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

◇    慧司がラブレターを読んでから、一週間が経った。  あの日以降、慧司がその手紙について触れることもなければ、大真から話題に出すこともなく、もしかしたら忘れられてしまったのかもしれないと思うくらい、何もない日々を過ごしていた。  慧司がラブレターをもらったことを知っている響と祥太郎も、その話題に触れてくることはなかった。  休み時間にはいつも通り、くだらない雑談か、小テストの愚痴をこぼしているうちに時間が過ぎていく。 (……まあ、それで良い。元々それ以上を望んでいたわけではないし、今さら欲張りになんかならない) 「放課後さ、お前ん家寄るわ」  登校したばかりの靴箱で、慧司は大真を見ずにそう言った。  一緒に登下校することはよくあったが、大真の家に慧司が来るのは久しぶりだった。 「何すんの? ゲームはやり尽くしただろ」  他に何か、家に暇を潰せるものがあっただろうか。それならいつものように、ゲーセンやフードコートに寄って、ダラダラ過ごすほうが良いのでは?    大真は何か良い案がないかあれこれ考えていると、眉間にシワが寄っていたのか、慧司がそこを指で押してきた。  急に視界に入ってきた慧司の指先に驚き、大真は「ワッ!」とみっともない声を出した。  思わず靴まで落とした大真を見て、慧司は鼻で笑う。 「今日は普通に話をしようぜ」 「……何の話だよ」  笑っていたのは一瞬で、慧司はすぐに真顔になると、大真の予想外のことを言い出した。   (普通に話をしようぜ? 今までそんなことを決めて話したことなんかないだろうが) 「お前と普通に話? お前との普通の話って何? 話したいテーマでもあんの?」  珍しい誘いにテンパりながら、大真は早口で尋ねた。  けれど、慧司は「何だって良いだろ」とそれだけ言って、また高い位置からスリッパを落とす。  散らかったスリッパへ視線を向けることもないまま、さらっと足先で整えて履くと教室へと先に歩いて行った。  慧司の意図が分からない。 (……まさか、とうとう手紙の送り主が俺だとバレたのか!?)  せめて何の話をするかだけでも軽く教えてくれればいいのに。  大真は、内側から破って出てきそうなくらいに煩く鳴る胸を、グーにした手で強めに押さえつけた。  結局何の話をするか全く分からないまま、普段通りの慧司の横で、大真は落ち着きなく過ごしていた。  何度も消しゴムやシャーペンを落としたり、授業中に先生に当てられても気づかなかったり。隣の席の響にまで笑われてしまった。

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