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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。

 放課後の廊下は、先生の目が少ないからか騒がしい。  大生(だい)は、知らない上級生が騒いでいる廊下を、できるだけ目立たないように猫背で歩いていた。  他学年の階には行くのはこれが二回目だ。  たったの二回で慣れるわけがないし、ましてや上級生の階に行くなんて、本当ならば避けたいことだった。  けれど、大生には、どうしても行かなければならない理由があった。  できるだけ上級生を視界に入れないようにしよう。  大生は窓の外を見たり、それでも誰かが視界に入りそうなときには、掲示板へと視線を向けた。  階段を上がってすぐの教室ならまだマシだった。でも、目的の教室は一番奥なのだ。  とはいえ、距離にすれば大したことはない。それでも、大生にとって慣れないこの廊下は、長距離走くらいしんどかった。 「ふう……」  ようやく見えてきた、三年七組の教室を見て、大生はほっとした。  何となく前髪を指先で整え、シャツの襟を整えた。   (あれ……?)  前回ここに来たときは、初めて上級生の教室に来る大生を気遣ってか、祥太郎は教室の前に立って待ってくれていた。  でも今日は、入り口付近に祥太郎の姿はない。 (中を覗かないといけないのか……)  入り口から覗くより、廊下側の窓から覗くほうが目立ちにくいだろうか。  こんなことなら、「俺が大生の教室に迎えに行くよ」と言ってくれた先輩に甘えれば良かったのかもしれない。  大生は、先輩を来させるなんてできないと、そう思って断ってしまっていた。  大生は、鞄の紐を握りしめ、ほんの少しでも勇気を持てるように、左手で頬をパシッと叩いてみた。 「よし……!」  どうか、すぐそこにいてくれますように。  大生は祈る気持ちで、廊下の窓から教室の中を覗いた。 「しょ……祥太郎、先輩……」  呟いた声は、教室に残って喋っている先輩たちの声にかき消された。  大生は誰かに先輩を呼んでもらおうと思ったが、声をかけられそうな雰囲気の人が誰もいない。  普通に声をかけて頼めば、きっとみんな助けてくれるだろう。けれど、楽しそうに話しているところに割って入る勇気はなかった。  こうして窓から小さく名前を呼ぶだけで精一杯だった。  ぐるりと、教室全体を見渡してみたけれど、先輩は見当たらない。  大生は、目立たないように、教室からすぐ近くにある非常階段の扉前で待つことにした。  そこから、教室の中にある時計を見て、時間を確認する。  時計の針は、午後五時をさそうとしていた。  今日はここに来るのが少し遅かったかもしれない。   (一時間半くらいしか一緒にいられないかも……)    終わりの時間が決まっているからこそ、少しでも多く二人の時間を作りたかった。  大生は、肩にかけていた鞄を下ろし、足元に置いた。  先輩を待っている間に特にすることがなく、スリッパの中で足の指を曲げたり伸ばしたりした。  時々顔を上げて、先輩が来ないか確認しては、誰もいない廊下に小さく肩を落とした。 (早く会いたいなあ……)  

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