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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。

◇  図書館デートの日から、一度も会うことなく夏休みが終わった。  避け合っていたわけではなく、先輩はとにかく夏期講習が忙しかったようだ。  それでも、二人でどこかに出かける時間が取れない代わりに、連絡は時々くれていた。  大生は、連絡すらないかもと思っていたからこそ、メッセージが送られてくる度に胸が躍った。  ただ、あのときはどうにでもなれ! の気持ちでキスに応えたものの、簡単に思い出にできるわけもなかった。   会わないことで、あの日のキスばかり思い出し、先輩への好意が募っていく。  できればやっぱり、キスの意味も知りたい。 (でも、怖いな……)  学校が始まって、二日が経ち、今日は例の水曜日だ。  何度か送られてきたメッセージでは、水曜日の勉強会に触れられることはなかった。大生も自ら尋ねる勇気はなかった。    祥太郎の教室に行くべきかやめるべきか、大生は朝から放課後になるまで、ずっと考えていた。  授業中ぼーっとして当てられたことに気づかなかったり、考え込んで表情がかたまって「顔が怖いよ」と友人に指摘されたり。  「お前今日どうしたの?」と、何人かが心配して声をかけるほどだった。  帰りのホームルームが終わり、鞄に教材を詰めながら、大生は緊張で吐きそうになっていた。  夏休み明け最初の水曜日を逃したら、もう勉強会をしていたあの頃には戻れないかもしれない。  そう思うと、誘われていなくとも、一度行くべきだという気持ちになった。 「ふう……」  三階の廊下を歩きながら、大生は鞄の肩紐を強く握りしめた。  あれだけ気にしていた知らない上級生からの視線は、今の大生にはどうでも良かった。  ただ、徐々に近づいてくる三年七組の学級札に、胸がざわざわする。  一度やっぱり帰ろうかと背中を向けたけれど、両手で頬を叩き、自分を励ました。 「祥太郎先輩……」  大生は、廊下の窓から教室を覗き、祥太郎の姿を探した。  祥太郎の姿は見当たらない。また、隣の六組にでも行っているのだろうか。  大生は、六組の教室後ろ側の入り口から、こっそり中を覗いた。 (いない……)  とぼとぼと歩いて七組のほうへ戻り、非常階段前でしばらく待つことにした。少しして先輩が来なければ、もう帰ってしまおう。  祥太郎の教室には、まだたくさんの生徒が残っていた。帰らずにみんなと雑談していてもおかしくない先輩が、そこにいないのは不自然にも思える。 (連絡がなかったのは、僕を避けているから? 夏休みの間は、たまにくれたのに……)    大生は先輩の教室の時計を確認した。まだ三分しか経っていない。それなのに、一時間くらい待っているような、そんな感覚がする。  肩にかけたままの鞄がやたら重い。でもおろしてしまったら、ここから動けなくなりそうだった。  いつまで待つべきか。  今日を逃したら、来週またここに来る勇気はない。仮に先輩から誘われても、今日はいなかったくせに、と素直に受け入れられないかもしれない。  

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