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拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

「……俺の進路なんだろ? じゃあ雑誌は俺のほうを向ければ問題ないじゃん」 「だから俺も見るんだって」 「慧司、お前だるいってまじで。反対側からでも見られるだろうが」  慧司は言い返した大真に、いつもの何を考えているのか分からない視線を向けた。  (座る位置ってそんなに重要なのかよ……)  大真が何も言えないでいると、慧司は起こしかけた大真の手首を離し、ベッドに押し倒した。それから、大真の上に跨る。 (え!? 何……!?)  仰向けになっている大真の顔の横に、慧司が両手をついた。 (待って。何で……こんな……!)  さっきよりも大真の視界は慧司でいっぱいになった。  慧司の腕に囲まれて、横に転がって抜け出すこともできなければ、慧司の胸板を押して逃げることもできない。  慧司の匂いに包まれるような感覚に、身体が熱を帯びていくのが分かった。  大真は胸元で両手を丸めた。 「おい、慧司……! 何だよこれ」 「お前がうるさいからだよ」 「はあ!? 何もうるさくないだろ!」  ベッドの上で、慧司の顔を見上げるのがあまりにも恥ずかしくて、大真は顔逸らして横に向けた。  大真は落ち着くために、ベッドの上に何冊か置きっぱなしになっていた漫画の帯の文字を、無意味に脳内で繰り返した。  慧司はしばらくすると、大真に跨るのをやめ、隣に寝転んだ。それから大真の顎を掴み、無理やり自分のほうを向かせた。 (顔が近い……!) 「大真」  見つめたままで名前を呼ばれ、大真は心臓が握りつぶされたように痛くなった。  顔ごと逃げられないならせめて視線だけでも逸らしたいと思うのに、あまりにも近い距離に慧司の顔があり、引き寄せられるように視線を戻してしまう。 (どうしてそんなに優しい声で呼ぶの)  隣にいて見つめてくるだけではなく、名前を呼んでくる慧司に緊張し、大真はシーツを掴んだ。  しんとした部屋に、グググと爪がシーツに引っかかった音がする。 (進路の話だったのに、慧司とベッドにいる……)  ダラダラと過ごした延長で、夜に同じベッドに寝ていた昔とは違う。まだ部屋は明るいし、何より慧司の視線に熱がこもっているように感じてしまう。 「お前、志望校ないの?」  けれど、いつまでも余裕がないのは大真だけで、慧司は普段と変わらない声色でそう尋ねた。 (何だよ。動揺している俺が、あまりにもバカみたいだろうが) 「……俺は、経済学部なら特にこだわりがないし、地元の大学で良いかなって思ってるよ」  慧司のせいで少しだけ気持ちが落ち着いた大真は、小声で答えた。  どうしても行きたい大学はないし、どこにでも行けるように努力もしていない。地元のそこそこのレベルの大学が自分には合っている。 (そしたら俺たちはもう……) 「……地元か。じゃあ俺たち離れるんだな」

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