12 / 12

拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

 ようやく言われたことを飲み込めたところで、予想外すぎてそれ以降言葉が出てこなかった。 (ルームシェアしたいから、俺と近くの大学に行きたいってことね……。いや、でも何でルームシェア……)  何も言わない大真に痺れを切らしたのか、「何? やなの?」と言いながら慧司はベッドから起き上がり、大真の横に座った。  さっきまであれだけ隣を嫌がっていた大真も、この状況についていくことに必死で逃げる余裕はない。  慧司は情報誌を手に取ると、改めて大真の前に突き出した。  よく見ると小さな付箋が何枚か貼ってある。 「大真、ルームシェア嫌なのかよ」 「……嫌とは言ってないだろ」 「じゃあ決まりだな。付箋が貼ってある大学が俺の大学からわりと近くて、お前でも受かりそうなところ」 (え? わざわざ調べたの?)  押し付けられた情報誌を手に取り、ぱらぱらとめくると、付箋のページにはマーカーも引いてあった。  慧司なりに、おすすめだと思うポイントに線を引いたのか? と、慧司の謎な丁寧さに戸惑う。 「今日はそれが言いたかっただけだから。来週に進路希望出すとき、その中から選んで書けよ」  そう言うと、コップに注いでいた飲み物を一気に飲みした慧司は、あっけなく帰って行った。  階段を下りて行く音を聞いているとあまりにも軽やかだった。 (なんか機嫌良さそう? だから、それはどうして……)  慧司が帰った後、完全に状況が理解できなかった大真には、何が起きたのか、何を言われたのかを整理する時間が必要だった。  さっきまで慧司が座っていた場所を、ぼーっと見つめたり、握られた手首を触り熱を思い出したりしながら、慧司とのやりとりを思い返した。  しばらく考えた後全てを理解した大真は、一人きりの部屋で「はあ!?」と叫んだ。 「……まさか、俺と離れる気がないってこと?」  幼馴染だからという理由だけではそばに居続けることが難しいとそう思い、離れるつもりだったし、離れるべきだと思って手紙を書いたのに。 「慧司と俺がルームシェア? はあ……?」  大真は、慧司が自分と離れる気がないことは何となく理解できたものの、今度は離れる気がない理由が分からなくなった。  ルームシェアと言われたことは、本来なら喜ぶべき提案だろうに、慧司の本心が全部見えないから素直に受け止められなかった。  大真は髪の毛をぐしゃぐしゃにかき、頭を抱えた。  それから机にうつ伏せになった。机はひんやりとしていて気持ちいい。 「慧司のヤツ……意味分からん……」  それでも、自分の都合は関係なく、慧司とこれからもいる理由ができたことだけは嬉しかった。  ただ、これからも一緒に居続けることが許されたのなら、この気持ちは絶対にバレてはいけない。

ともだちにシェアしよう!