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拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

 人の告白現場なんて、そんなにじっくり見たり聞いたりするものではないし、校門で待つべきか。  それとも、せめて二人のやりとりが聞こえないくらい距離をとるくらいでも良いのかも。  大真はどこで待つべきか考えてみたけれど、そんなことよりも告白の結果が気になって仕方がなかった。  他クラスや他学年の生徒もちらほらやって来て、楽しそうに話している声がした。  この場からあまり離れすぎると、帰る生徒たちの声や足音で、二人の会話が聞こえなくなってしまいそう。  せめてここならと、大真は昇降口のガラス扉から数歩分離れた壁にもたれかかった。 (バレないように聞けば許されるか? ここならギリギリ声が聞こえる)  告白をするわけでも、されるわけでもないのに。なぜか一人緊張してしまった大真は、コンクリートに爪先をトントンと押し付けた。 「慧司くん、好きです。私と付き合ってください」  聞こえて来た女の子の告白は、とてもシンプルなものだった。  わざわざ二人でいるところを呼び止めたのだから、もっと慧司への思いを語ってからだと思っていたのに。 (もしかして、みんなの告白ってシンプルなの?)  大真は手紙に綴った慧司への気持ちを思い出し、なんだか恥ずかしくなった。  自分の告白は、丁寧すぎたのかもしれない。みんながシンプルな告白をしているのなら、受け取ったときの慧司の反応も納得できる。 (ますます俺だとバレるべきではないな)  大真は少しひんやりしている手の甲を、熱を帯びた頬に押し当てた。    そうこうしているうちに、慧司が「この手紙をくれたのはキミ?」と、噂通りの質問をする。  ふと、本当に「書いたのは私です」と言う子が現れたら、どうするのか大真は気になった。  送り主が書かれていない以上、私ですと返事をすれば、誰でも付き合えてしまう。  慧司に告白する子の中で、何をしてでも付き合いたいと思う子がいれば、そういうこともありえるはずだ。  嘘ってそんなに簡単につけるものでもないし。 「私が書きました……!」 (……え?)    声だけ聞くつもりだったのに、嫌な予想通りの返事が聞こえ、大真は思わず少しだけ身を乗り出した。  ガラス扉越しに、ぷるぷると可愛らしく震えているその子が視界に入る。  嘘だとバレるリスクよりも、付き合いたい気持ちが勝ったのだろう。 (……くそ!)  大真はこの状況にものすごく腹が立ったけれど、自分はあの子みたいに直接言葉で伝える勇気はなかったから、こうなっても仕方がないのかもしれないと、気持ちを鎮めるしかなかった。  怒る資格はない。名前を書かなかったのは俺なのだから。

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