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拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。
「キミがくれたんだ?」
ようやく口を開いた慧司の声は、最初の返事同様低いままだった。
さすがに見ているのは良くないと、大真はまた見えない位置に戻り、壁にもたれた。
靴箱に行くまでいつもと変わらない慧司だったのに、声をかけられてから急にテンションが低くなったことが引っかかる。
それに慧司が噂通りの質問をしたことも、大真の胸をざわつかせた。
「……はい」
慧司の態度がずっと悪いままなことに戸惑ったのか、それとも嘘をついた罪悪感なのか。
女の子の声も、告白のときより小さくなっていた。
彼女の嘘に対して、慧司はどんな反応をするのだろう。
(……嫌だ、やっぱり聞きたくないかも)
この場を去るべきか、耳を塞ぐべきか、どちらにしようか大真が悩んだ一瞬の隙に、慧司は「あはは!」と笑い出した。
そこまで大声ではないはずなのに、昇降口の騒がしさを忘れるほど、大真の耳に入ってきた。
「慧司くん……?」
女の子が、戸惑ったような声を出す。
(慧司、何で笑ってるんだよ)
その場を去ることも、耳を塞ぐこともどちらもせず、大真は少しだけ靴箱のほうへ身体を寄せた。
さすがにガラス扉からまた身を乗り出す勇気はなかったけれど、慧司が笑った意図が知りたいと思った。
「キミさあ、さすがにそれはダメだろ。嘘つくなんてありえねえよ」
「え?」
慧司は低い声に戻ると、きつめの言葉をその子に向けた。慧司のここまで低い声を聞くのは初めてだった。
大真といるときに口が悪いことや不機嫌なことは何度もあった。でも、嫌悪を含んだような怒りを出す慧司は見たことがない。
思い切って身を乗り出したところでガラス扉越しの背中しか見えないし、実際に慧司の顔を確認することもできない。
それでも、慧司の今の表情を想像すると、大真は落ち着かない気持ちになった。
(絶対に怖い顔してる)
「どうして嘘だって分かるの……。匿名で出してるのに」
嘘をついてごめんなさいと言って終わりにすれば良いのに、女の子はすぐに自分の非を認めなかった。懲りずに、慧司に向かって言葉を続ける。
それがさらに慧司を苛立たせたようだった。大きめのため息が聞こえる。
大真は慧司の様子がますます気になった。
もうどうにでもなれと、ガラス扉から少しだけ顔を覗かせた。
「どうして分かったかって? 匿名だから私だと嘘をついてもバレないだろう、ってそういう考えが透けて見えただけ。残念だったね。俺は騙されないから」
「ひどい……」
「ひどいのはどっち? 他の子にも言っててよ。絶対に嘘はつくなよって」
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