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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。
「先輩……」
「なあに」
一瞬離れたかと思うと、今度は抱きしめられた。後頭部に回された手で、優しく頭を撫でられる。
それがくすぐったくて思わず身を捩ると、フッと笑った先輩が、鼻先、おでこにキスを落とした。
(どうして……?)
大生がそれを拒否しないで受け入れていると、「嫌じゃないんだ?」と先輩は困ったように眉を垂らした。
「やなわけ、ないです……」
(だって僕は、先輩のことが……)
さすがに言えないから、大生は先輩のシャツの腰あたりを掴んだ。
自分でも分かるほどに手が震えている。
それに気づいた先輩が笑い、キスをやめて大生を抱きしめた。トントンと背中を叩かれる。
幼い子どもを寝かしつけるときみたいに、優しい触れ方だった。
自分の心臓の音なのか、それとも先輩のものか。ドクドクと響くその音を聞きながら目を閉じると、最後に耳にキスをされた。
(これもぬいぐるみとして……? それでもいいや。こうして触れてもらえたのだから)
触れることにネガティブな感情がないだけで、大生にとっては充分だった。
大生は、先輩の背中に腕を回し、力いっぱい抱きしめ返した。
「大生、俺はさあ、お前との時間が必要なんだよ。だから、邪魔になるかもとか思わないでほしい」
「……え?」
「この日を楽しみに、他の日も頑張ってんだから」
「そう、なんだ……」
“お前との時間が必要”という先輩の言葉が、頭の中で何度も繰り返された。
本当は飛び跳ねて喜びたいくらいときめいたけれど、そんな反応はできない。
大生は、先輩の胸に顔を埋めたままでひとり喜びを噛み締めた。
「お前、反応薄くないか? もっと喜べよ。先輩にそんなこと言ってもらえて、僕とっても嬉しいですゥ〜って」
「……そんなこと言うわけな……、あ、やめ……!」
どんな顔をして勉強に戻るのか分からない雰囲気の中で、祥太郎がふざけた声を出した。祥太郎の手が脇の下に入れられたかと思うと、そのままこちょこちょとくすぐられた。
「やめ……、あはっ、はは、やめて! もう無理……! ひい……!」
大生は笑いながらカーペットへと崩れていった。先輩はそれを笑いながら見ている。
さっきまでの甘い空気は、一瞬で消え去った。
「ほら、さっさと勉強するぞ」
「……はい」
倒れたままの大生を、祥太郎が引っ張ってくれた。立ち上がった祥太郎は、大生の隣から正面に移動し、教科書を開いた。
「分かんないところあればすぐ言えよ」
「……たぶんあと数ページ後に大量にありそうです」
「ははっ、いくらでも教えてやるからな」
さっきの余韻が残っている大生とは正反対で、先輩は何事もなかったようにシャーペンを動かし始めた。
それが少し寂しい。僕はまだ熱を忘れられないのに。
それでも関係がギクシャクしてしまうよりかはこのほうが良い。
問題を解きながら、大生はさり気なく先輩を見つめる。
(先輩の伏し目……、最高にかっこいい……)
「先輩」
「ん?」
「もうすぐ夏休みですけど、夏休みはこれ……どうなるんですか?」
「お前との時間? 作るに決まってんだろ」
「そっか」
なかなか集中できない大生を気遣ってか、祥太郎が大生の唇にポッキーを押し付けた。
「何も心配すんなって。それ食って頑張れよ」
「はい……」
ぽりぽりと少しずつ食べる。
先輩に勧めたくて買ってきたくらいお気に入りのポッキーなのに、味が分からない。
ぼーっとしたまま食べ、最後に飲み物で流し込むと、大生も教科書に目を向けた。
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