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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。

 夏休みの図書館は、想像以上に混んでいた。  おしゃべりスペースで読み聞かせをしている親子もいれば、勉強をしている学生もいる。   (なんか……すごい)  大生は図書館に来るのは久しぶりだった。  小さな子どもの声以外、話し声はほとんど聞こえない。  館内の静かさのせいで、何だか緊張してしまう。  でも、不思議と居心地の良さもあった。    貸し出しカウンター近くの本棚に、小さい頃に読んでいた馴染みのある絵本を見つけた。  懐かしさにふと足を止め、大生はその本を手に取る。  きっとこれまで色んな人に借りられてきたみたい。テープで修理している箇所がたくさんあった。 「それ、俺も好きだったやつ」  祥太郎が大生の耳元で囁いた。  誰もが知っている有名な絵本なのに、先輩も読んでいたと知って一気に特別になる。  大生は、パラパラとめくって中を見た後、丁寧に棚へと戻した。   「学習スペースはあっち」    さっきまでふざけていた先輩も、館内では静かだった。顔つきも真面目に見える。  祥太郎に案内されたスペースに移動したけれど、二人で横並びに座れる席は空いていなかった。  みんな一つ飛ばしで座っている。ここで過ごすなら、知らない人の間に座るしかないみたい。 「今日、いつもより混んでるわ。せっかく来たのにごめんなあ」    祥太郎は分かりやすく肩を落とした。  図書館デートだから、それなりに静かに過ごすことになると、大生も想像していた。  それでも隣に並んで座れると思っていた。  問題集を一緒に覗き込めるかなって。 「仕方ないです……! あそこに座りましょう」    隣に座れなくても、斜めだったら先輩の顔が見えるかもしれない。  大生はその席が誰かに取られてしまわないよう、静かに、でも大股で席へと向かった。 「遠くなっちゃったね」 「……はい」  斜めの席だからマシだと思ったのに、実際に近づいてみると、真ん中のアクリル板がかなり邪魔をしていた。  仕切られているせいで、先輩と視線を合わせることも難しそうだ。  でも、先輩は忙しい中で誘ってくれたんだ。  図書館デートをやめて、どこか他の場所で遊びたいわけではない。 (せっかく会えたんだから、それだけで充分だ……)  空いている二つの席は、男性の間か女性の間かしかない。  先輩が女性の隣に座るの、嫌だな。  大生は祥太郎にどっちに座りたいか聞くこともなく、自ら女性の間に座った。 「じゃあ俺はこっちね」  祥太郎は何も気にしていない様子で、大生の斜めにの席の椅子を引く。 「とりあえずニ時間は頑張ろう」 「……うう、分かりました」  広い同じ空間で、それぞれ勉強をするだけの会になってしまった。二時間は大生にとって、果てしなく長い時間に思えた。  水曜日の勉強会は、祥太郎がいてくれたから集中が続いていただけ。一人だったら三十分置きに休憩を挟むこともあった。  勉強をしたら、その後は何をするのかな。  顔を上げて先輩のほうを見ると、かろうじて頭頂部だけ見えた。   (先輩も顔を上げてくれないかな……)  数分待ってみたけれど、祥太郎が顔を上げることはなかった。俯いていたままだ。きっと真剣に教材を見ているのだろう。  さっきまでは僕に会えて喜んでいたのに。    これまでの先輩とは別人みたいだ。それも先輩のギャップに思える。  (僕も、頑張らないと……!)  せっかくだから、今日中に課題をほとんど終わらせられたらいいな。  大生は一度大きく伸びをし、それから必死に問題を解いた。  それでも時々、無意識に先輩の席を見てしまっていた。

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