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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。
(あーあ……)
普段から、真由と教室で騒いでいる先輩の姿を想像してしまう。
大生は真由が羨ましくて、たまらなくなった。
自分は先輩にとって、ただの後輩で、ぬいぐるみ的な、そんな役割だ。
だから、真由と祥太郎の距離の近さは、大生のそれとは全然違う。
(先輩と、同じクラスだったら良かったのに……。そうしたら、毎日隣で笑っていられたのかな)
「先輩……」
大生は、無意識のうちに祥太郎の服の裾を掴んでいた。
「あ、ごめんごめん」
それに気づいた祥太郎が大生の頭を撫でながら謝る。
「今ね、大生とデート中なの。また夏休み明け学校で」
「あっ、そうだったん?」
顔の前に手を置き「ごめん」と言う祥太郎に、真由は親指と人差しを合わせ「おけ!」と微笑んだ。
「じゃあまた学校で! えっと……邪魔してごめんね!」
さっきまで祥太郎のほうばかり見ていた真由も、最後は大生を見てぺこりと頭を下げた。
モヤモヤは残っていたけれど、大生もお辞儀を返す。
「一人にしてごめんね」
「僕のほうこそ、会話の邪魔してごめんなさい……」
「いや、全然。せっかく大生といるのに、知らないやつと話してたら嫌だよな」
(知らない人と話したからじゃなくて……)
大生は先輩の服を掴んだまま、彼から視線を落とした。
これまでマネージャー以外の女子と祥太郎の絡みを見たことがなかった。
でも、先輩は、人懐こくて、明るくて、優しいから、男子だけじゃなくて女子とも仲良く過ごしているのだろう。
大学に行けば、もっと出会いが増える。部活動を言い訳に彼女を作らないなんてこともなくなるだろから、先輩に彼女ができるのは時間の問題かもしれない。
そうしたら、二人で過ごした時間は忘れられるだろうし、今日みたいに久しぶりに会えたことを喜ばれることもなくなるんだろうな。
(……待って。そういえば、先輩の志望校って、どこ……?)
大生は、祥太郎は県内の大学に進学するものだと勝手に思い込んでいた。
「……先輩」
「どうした?」
「先輩の志望校って、どこなんですか? 今さらだけど、聞いてなかったなって……」
「……あー、」
大生の質問に、祥太郎は言葉を濁した。
先輩の寂しげな瞳と垂れた眉に、大生は答えられる前に察した。
(遠くに行っちゃうんだ)
「……東京だよ」
「そう、ですか……。離れちゃいますね……」
「まあ、受かるかまだ分かんないけどね」
東京に行くには新幹線や飛行機が必要だし、それでもわりと時間がかかってしまう。
毎月のお小遣いから貯めたとして、先輩にどのくらいの頻度で会に行けるのだろうか。
(そもそも、大学生になった先輩が僕に会いたいと思ってくれるのかな……)
大生は、膝の上でぎゅうっと手を丸めた。悪い考えばかり浮かんできてしまう。
「……でも、先輩は頭いいし、勉強も頑張ってるから、受かりますよ……」
「そうかな、そうだといいなあ」
会えなくなるの寂しいな。俺も会いに行くからね。大生はすぐにでも、そう言ってほしかった。
けれど、目の前の先輩はただ困ったように笑っていて、その言葉は返ってこなかった。
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