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キミへの気持ちは手紙にのせるから、覚悟して受け取って。

「お待たせ。帰ろうか」 「……はい」  大生と祥太郎の靴箱は、学年が違うせいで随分と離れていた。  昇降口のガラス扉付近で待ち合わせ、そこから肩を並べて歩く。  周囲は下校中の生徒たちで騒がしい。  さっきまでは普段通りだった先輩も、今は無言で歩いている。 (何か……話したほうがいいかな……)  とはいえ、どの話題をどのテンションで話せばいいんだろう。    結局、大生もどうしたらいいか分からず黙っていると、先輩が口を開いた。 「そういえばあいつ、この前ラブレターもらったらしいんだけど……」 「ラブレター、ですか?」 「うん。それがさ、匿名だったらしいんだ」 「へえ……。匿名のラブレターかあ……」 「だからあいつ、送り主を探しているんだって」  想いを言葉に、ましてそれを手紙にするのは難しいだろうけれど、好きな相手を想いながら書くその時間は、宝物のような気がする。  それなのに、自分の名前を明かさないのは、何か特別な理由でもあるのだろうか。  正面を向いて歩いていた先輩が、何か言いたそうな表情で大生を見た。  夕陽が先輩を照らし、大生は眩しさに思わず目を細めた。 「大生は、ラブレターもらったことある?」 「……あれをラブレターと言っていいのかは分かりませんけど、保育園の頃に女の子にもらいました。……先輩は?」 「俺は、手紙はないかな」    手紙はないなら何があるの?   祥太郎の含みのある言い方に、今度は大生がムッとした。  大生は砂利を蹴飛ばすように足を上げた。 「大生」 「あ……」  隣を歩いていた祥太郎が、突然正面に立った。舞い上がった砂埃が祥太郎のズボンの裾を汚す。  すみません、と謝り払おうと伸ばした大生の手首を祥太郎が握った。 「なあ、もし俺が書いたらもらってくれる?」 「え? 何を、ですか……?」  手首を掴んでいた手は少しずつ下がり、大生の丸めた手に重ねられた。   「手紙だよ。ラブレター」 「……僕に?」 「そう」  冗談かと思ったけれど、先輩の顔はこれまでのどの瞬間よりも真剣に見えた。声色も低く、少し伸びた前髪から覗く視線に引き込まれる。   「……本気、ですか?」 「本気だって言ったら?」 「……何で、そんなこと言うの。先輩、試してばっかりじゃないですか」 (いつも、何も言ってくれない……)  あの日のキスだってそうだ。先輩はいつもズルいことしか言わないで、僕を揺さぶってばかりだ。   「……それ込みで、ちゃんと伝えるから。書いたら受け取って、読んでほしい。できたら返事ももらいたい」 「……っ、」  重ねられた手を、大生は握り返した。  実際にその手紙をもらえるまで、先輩の真意は分からない。  それでも、大生の中で勝手に期待が膨らんでいく。 「……早く、ほしいです」 「うん。早めに渡す。だから待ってて」  大生の目からぽろぽろと溢れた涙が、地面に染みを作った。  祥太郎が大生の頬に触れ、指の腹でその涙を優しく拭った。

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