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大好きなあなたへ。どうしたらこの気持ちを受け取ってくれますか。

「おい、授業中の手紙交換はダメだぞ」  数学の授業、女子数名が手紙のやりとりをしていたようで、数学の黒崎篤志(くろさきあつし)先生が低めの声で注意した。  滅多に聞けない先生の怒った声に、一部の女子が騒ぐ。  黒崎は二十代後半で、学内の中で二番目に若い先生だ。身長はそこまで高いわけではない。ただその若さと、すーっと通った鼻筋と切れ長の目、耳に向かって少し流れるセンター分けの前髪が、女子にとっては“ときめきポイント”らしい。   「橋口(はしぐち)! 見えてるぞー」 「……ちぇー」  端の席ならバレないとでも思ったのか、すぐにやめなかった橋口を怒る黒崎を、(ひびき)は一番後ろの窓側の席から眺めていた。 「授業中じゃなかったらいいんですかー?」 「授業外なら良いだろ。勝手にしろ。ただし、人の悪口は書くなよ」 「はあーい」  怒られちゃった、と橋口とその周辺の女子がコソコソと話している。響は女子たちがいつ手紙交換をするかなんて、心底どうでも良かった。  ただそのおかげで、怒った黒崎を見られることには感謝した。 (今日はレアなお怒りモードだ。ふっ、可愛い)    授業開始早々、眉間に皺を寄せて怒った黒崎を見て、響は満足した気持ちで板書する。  響は他の授業では度々寝ることもあった。けれど、黒崎の授業だけは絶対に寝ないで、いつも真剣に聞くと決めていた。 (だって、あっちゃんの授業だもんね)  響にとって黒崎は、大好きな先生で、幼馴染だ。小さい頃からずっと、あっちゃんと呼び続けている。 「はい、じゃあみんな、集中し直して。この問題を解いてみろ」  黒板に問題を書く黒崎の、綺麗に刈り上げられたうなじを眺めていると、響はその少し上にぴょこんと跳ねた寝癖を見つけた。 (この距離でも寝癖に気付けるって、俺ってばどれだけあっちゃんのこと好きなわけ?)  特別視力が良いわけでもないのに、自分の謎の特技に、響はククッと笑った。ついつい板書の手が止まる。   (待って、寝癖可愛すぎだって)  ぴょこぴょこと動くそれを見ていると、いつの間にか解答時間が過ぎていた。黒崎は、前に出て来て問題を解いてもらうと言い、クラス全体を見渡した。  いつもの響ならしっかりと授業を聞いて、先生の前で恥をかかないよう決めている。  けれど、今日は寝癖に気を取られて、指定された問題は白紙のままだ。  やばい! と一人焦っていると、誰にしようかと決めかねている黒崎と目が合った。  響は、咄嗟に胸元でバツを作った。それから、頼むから当てないでくれと両手を合わせてお願いする。ついでに頭も下げた。  

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