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大好きなあなたへ。どうしたらこの気持ちを受け取ってくれますか。

 響の必死な様子に、黒崎は思わずフッと笑った。響の願いが通じたようで、黒崎は響の隣の席の大真(はるま)を指名した。  黒崎が自分を見逃してくれたことを、幼馴染の特別な待遇だと思いながら響が喜んでいる。一方で、当てられてしまった大真は「げ、俺かよ……。終わった……分からん……」とブツブツ言いながら頭を抱えていた。  ちらりのノートを見ると、大真も白紙だった。 (そういや大真は、数学苦手だったわ)  俺のせいでごめんと、そう思ったところで、もちろん代わってあげることはできない。  大真が助けてとでも言いたげな目で響を見てきたが、首を横に振ることしかできなかった。  分かりませんと正直に言うこともなく、大真は肩を落としながら黒板に向かった。前に出たところで解けないのに、逃げずにチョークを手に取る姿に感心する。  途中まで解いてみる気なのだろうか。 「先生。その問題、俺が解いてもいい?」  大真があまりにも可哀想に思えたのか、慧司(けいし)が手を挙げた。自ら挙手したくせに、やる気が一切伝わらない、だるそうな声だった。 (いや、どっちなん? やる気あるのかないのか……)    慧司の声に、大真は振り返って顔を輝かせた。それから、期待を込めた様子で頷き、先生に手を合わせ頭を下げる。 「慧司と代わりたいです!」  普段の先生なら、それでも解いてみなさいと言ったに違いない。    でも今日は、響のことを見逃したのだから、大真の代わりに慧司に答えさせることも許可せざるを得ない。  黒崎は、少し考えた後「いいぞ。交代な」と許可した。  嬉しそうに先に戻って来た大真が、響に向かって「ラッキー」とピースをする。  響は「良かったな」返したけれど、元はといえば大真が当てられたのは響が断ったせいだ。 (本当はごめんって言わなきゃなんだけど)  響と大真が話している数十秒の間に、慧司が問題を解き終えた。席に戻って行く慧司に、大真は口パクで「ありがとう」とお礼を伝えていた。  慧司は特に反応せず、これくらい解けるようになれよ、とでも言いたげな視線だけこちらに向けていた。 「慧司って、頭いいよな」 「そうなんだよ。ずっと頭いいし、かっこいいし、運動できるからモテる」  響が慧司を褒めると、なぜか大真が嬉しそうにする。 「大真もそこそこかっこいいし、運動できるのにモテないな。頭いいって大切なんだな」 「は? 響だって勉強できないからモテないじゃん。お前だってそこそこかっこよくて運動もできるのにな」 (俺は別にモテなくたっていいし。あっちゃんだけに好かれたらそれでいい)  慧司が解いた問題の解説をする先生の背中を、響はじっと見つめた。  相変わらず寝癖が跳ねている。  先生のことが大好きな女子たちが寝癖が可愛いと騒いでもおかしくないのに、誰一人として気づいていないようだった。 (今日はもう当てられないだろうし、いいや)  授業が終わるまで、響はその寝癖ばかり見ていた。

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