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大好きなあなたへ。どうしたらこの気持ちを受け取ってくれますか。
黒崎のマンションに着き、車を降りると、響はぐーっと大きく伸びた。
10階以上ある築浅のマンションは、外観も内装もきれいで、テンションが上がる。
けれど、今から二人きりになることを考えると緊張してきて手に汗が滲んだ。
「何かそわそわしてない? どうした?」
滅多に来ない自分のマンションに緊張していると勘違いしたのか、黒崎は心配そうに響の顔を覗き込んだ。
エレベーターに乗り、響はボタンを押しながら「大丈夫」とだけ答えた。
(あっちゃんと二人きりは、慣れてるけど……、でも慣れないっていうか)
「あのさ、あっちゃんは、どう……? 俺と二人は気まずい?」
「ん? 急にどうした? 気まずいって言うか、今晩は騒がしくなるなあって思ってる」
響の問いに、黒崎は眉を垂らし「はは」と笑った。
「お菓子でも買えば良かったな。あ、でも、夜更かしはさせられないし……」とブツブツ続ける黒崎を、響はぼんやりと見つめる。
(やっぱり意識しているのは俺だけか)
幼馴染としてのポジションを大切にしたい気持ちと、そこから抜け出したい気持ちの両方がある。
でも、どっちに転んでも苦しいままだ。大切にすればあっちゃんに好意を渡せなくて苦しいし、抜け出そうとした結果、うまくいくとも限らないし……。
響は、黒崎の部屋がある八階までしばらく黙っていた。
「あー! 車に弁当箱忘れて来た……」
エレベーターを降り、部屋の前に着いたと同時に黒崎が叫んだ。今からまた駐車場まで降りる手間に肩を落とす。
普段はしっかりしているあっちゃんが、些細なこととはいえ弁当箱を忘れるなんて。
俺がいるせいでルーティンが崩れたのかもと、響は少し気になった。
「やば、俺が取りに行こうか?」
鍵を預かるよと出した手を、黒先が押し返す。
「いや、いいわ。先に入ってて」
やっちゃった、やっちゃったと繰り返しながら、黒崎は玄関のドアを開けた。
先に入るよう促され、響はしばらくためらった後、素直に従って靴を脱いだ。
(俺があっちゃん家に行きたいって言ったくせに……ダサ……)
靴を脱いで部屋に一歩上がると、一気に緊張感が増した。
今から明日の朝まで、この部屋で二人きりになる。あっちゃんの濡れた髪、あっちゃんの部屋着姿、朝起きて「おはよう」と言いながら見せる笑顔……。
響は脳内を占めてきた妄想を振り払うように、頭を左右に勢いよく振った。
「……じゃあさ、あのさ、あっちゃんが入って来たら、俺はお帰りなさいあなたって言えるやつ?」
二人きりだと意識してしまう自分を誤魔化すように、響は黒崎を揶揄う。
(嬉しいのに、心臓が落ち着かない)
「はあ!? 何だよそれ! 言えないやつだよ、馬鹿が!」
顔を真っ赤にした黒崎が、響の頭を思い切り叩いた。
叩かれた頭を押さえながら、響は苦笑する。そんな展開になるわけないか。
「ふざけたこと言ったら、今からでも追い出すからな!」
「……ねえ、追い出す以外の語彙はないの? さっきからずっと追い出すしか言わない」
「お前ふざけんな!」
「早く弁当箱取りに行けって」
「……くっ!」
響に煽られ、黒崎は呆れた様子で駐車場へと戻って行った。
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