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拝啓、愛しのキミヘ。そろそろ正直になりませんか。

「大真くん、食べてる?」  大真がぼーっとしていると、目の前に座っている女子が声をかけてきた。  黒髪ボブで、丸い眼鏡をかけている。ストローでちゅーっとオレンジジュースを口に含んだ。 (えっと……、確か(なつめ)さんだったよな)  てっきりみんな慧司に夢中だと思っていたのに。  大真は、自分に話しかけてくる人はいないと思って油断していた。予想外のことに、必死に名前を思い出そうとする。  それを察してか、彼女はストローから口を離すと、「あ、棗です」と自己紹介をした。 「あ……ごめん。言い訳に聞こえるかもしれないけど、棗さんは覚えてたよ。合ってたか自信がなかっただけ」 「そっか、ふふ。名前分かんないって顔してたから」 「まじか、ごめん……」  棗は目を細めて笑った。再びオレンジジュースを口に含む。 (何だかマイペースな人だな) 「もしかして、大真くんはこういう場は初めて? あまりにも慣れていない感じが出てるから」 「え?」  失礼なことを言われたかもと構えた大真を、棗はじっと見つめた。大真が返事に迷い、しばらく何も言わないでいると、棗は急に眉を垂らした。 「あ、私ってば何か失礼なこと言っちゃったかも。ごめんね」 「……いや、大丈夫」 「ついつい思ったことを言っちゃうんだよね。見ての通り、私もこういう場は初めてなの。今日一人いなくなったからって急遽参加を頼まれたんだけどさ、何をどうして過ごせばいいのか分かんないや」 (見ての通りと言われても分からないし、棗さんは昼からずっと一緒だったんじゃないの?)    とはいえ、一気に話す言葉数の多さ、話し方の雰囲気から緊張感は伝わらない。  独特な雰囲気のある彼女に、大真は思わず笑みがこぼれた。 (この人なんなんだろう。何かちょっと気持ちが楽になったかも)  初対面で、今初めて会話をしたのに。緊張感は消え、大真は少しだけ身を乗り出した。 「はは、棗さんって面白いね。さっき自己紹介でちゃんと言わなかったけど、俺だけ大学違うんだよね。慧司の繋がりで参加させてもらったけど、俺からしたら男子も慧司以外誰も知らないの。だから緊張すごくて」  棗は、うんうんと頷きながら、大真の話を聞いていた。お喋りな人かと思ったが、話を聞くときはしっかり目を見て反応をしてくれる。 (話しやすいな)  他の女子が慧司たちをちらちら見ている中、棗だけは料理や会話そのものを楽しんでいるようだった。特定の誰かに興味がある様子もない。  大真も気持ちが緩み、ついつい会話が弾む。他のメンバーが盛り上がる中、大真は棗とばかり話し、二人で笑っていた。 「私もね、本当は興味なかったんだけど、こういう合コン的な……、ん? 合コンでいいのかな? まあ分からないけど、経験しておくと役立つかなって思って」  棗も、少しだけ身を乗り出す。 「役立つ?」 「うん。実は小説を書いてて。だからネタ集めとして、些細なことでも色々経験してみようって思ってるの。いつか書くかもしれないからね」 「へえ、小説かあ」  見た目で判断しているわけではないが、小説と聞いて、大真は棗にぴったりだと思った。

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