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拝啓、愛しのキミヘ。そろそろ正直になりませんか。
結局何も話さないまま、玄関前まで来てしまっていた。このままだと、それぞれの部屋に行く流れになる。
朝になって何事もなかったように振る舞うのは避けたい。ただでさえ、あのキス以来、二人の雰囲気が少し変わってしまっているんだから。
「慧司、付き合うの? 正面の子と、いい感じだったじゃん」
玄関で靴を脱ぎながら、大真は慧司の服を掴んだ。もっと別の内容もあっただろうに。大真は自分の発言に後悔した。
「正面? ああ……」
正面の女子と楽しそうに話しているように見えたのに、慧司はどうでもいいような顔をする。
鞄を床に置くと前髪をかきあげ、「付き合ってほしいの?」と大真に質問で返した。
「付き合ってほしいとかじゃなくて、お前がどうしたいかだろ」
「だから何でお前はいつもそうなわけ? いつになったら正直に答えるんだよ」
ここまでしてもそんな態度なのか! と、慧司がイライラした様子を見せた。
(ここまでって何をしたの? 棗さんといい、はっきり言ってくれたらいいのに)
「もういいわ、はっきり言う。俺が悪いからいつまで経っても大真は何も言わねえんだもんな」
「……はあ?」
はっきり、を望んだけれど、慧司の態度から見て良い話ではないのかも。大真はどうしたらいいか分からなくなり、さらに慧司の服を強く掴んだ。
「はあ、ちょっと待ってろ」
慧司は大真の手を掴み、服から引き剥がした。それから自室に行き、すぐに部屋から何かを持って戻って来た。
ほら、と大真に手を出すように言う。
「……え、」
素直に従った大真の手に置かれたそれは、高校三年生のときに、大真が彼に送った手紙だった。
少し汚れたからか、以前より糊のあとが目立っている。
(えっ、えっ……? どうしてこれを?)
「慧司、まだ取ってたんだ……」
「まだ取ってたんだ? はあ? 送り主がずっと隣にいるからな。当たり前だろ」
ーー送り主?
「は? え、ええっ!?」
大真は、あまりの衝撃に思わず手紙を床に落とした。
慧司は「落とすなよ」と言って、大切そうにその手紙を拾う。
「俺はずっと、直接言ってほしかったよ。あそこまで熱烈なラブレターを書くなら、最後まで責任持てよ。勝手に諦めんなバカ」
まあ言いやすい環境を作り出せなかった俺も悪いけど、言葉を続けた慧司は、封筒から手紙を取り出した。
その手つきが優しい。
大真は、手紙を渡したときの慧司を思い出していた。あのときのままだ。
(俺からの手紙って、最初からバレてたのか?)
ぼーっと立ち尽くす大真の顔の前で、慧司が手を数回振った。
「大真……まさか、書いたこと忘れてねえよな? 読み上げるぞ」
「……やめろ!」
一言一句覚えているわけではないけれど、恥ずかしいくらい素直な気持ちを書いた。ここで読まれたら耐えられない。
大真は、手紙を取り上げようと勢いよく手を伸ばした。
「あっ!」
バランスを崩し、慧司にぶつかる。
「ってえ」
二人で床に倒れ込んだ。カーペットも何も敷いていない床の冷たさが、火照った身体にしみる。
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