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キミからの返事は、いつまででも待てるよ。

「後輩くんは、確か大生くんだったよね?」 「……はい」 「可愛いね。お姉さんたちと遊ばない? 連絡先交換しようよ」  二人は祥太郎をそっちのけで、大生へとスマホを差し出した。 「さすがにそれはダメでしょ」  ようやく祥太郎が口を出し、二人と大生の間に入る。 「祥太郎うざ」 「うざくない。大生は俺のなの」 「俺のではなくない? そんな権利、祥太郎にないでしょ」  ぶつぶつ文句を言う二人に対して、祥太郎はにいっと笑った。 「権利、あるんだよね」 「はあ? 何で?」 「大生は俺の恋人だから」 「……マジ?」  一瞬だけ、しんと沈黙が広がった。可愛いとちやほやされていた空気が変わり、大生は手を膝の上で丸めた。 (恋人って、何で言っちゃうの)  あまりにもあっさりと伝えた祥太郎に、大生は戸惑った。みんなの顔を見られない。   「うわあ……マジか。ずる……」 「……え」  それなのに、二人はあまりにも普通だった。重大な報告をされたとは思えない反応に、大生は拍子抜けする。  大生がゆっくり顔を上げて確認すると、先輩の一人が祥太郎の耳を引っ張っていた。 「てことは、祥太郎は毎日私らに惚気てたってこと?」 「紹介するだけして、私らにチャンスはないってこと?」 「そうだね。惚気てただけだね」 (同性なのにって思わないの……?)  この状況にかたまっている大生に構わず、三人はこれまで通りのテンションで会話を続けている。    以前に先輩とカフェにいて、話しかけられたときとは全然違う。先輩は僕のことを恋人だと紹介してくれて、それが当たり前に受け入れられたんだ。  大生はようやく息をついた。  気持ちがそわそわして、溶け切ってしまったアイスをストローで混ぜる。  ぐるぐると何度も混ぜ、キラキラしていた黄色が、クリーム色に濁っていく。ちう……と、静かに吸い上げた。 (甘い……) 「でもさ、大生くんさえ良ければ、私たちと遊ぶのはオッケーだよね?」 「だからダメだって」 「祥太郎、心狭すぎ。束縛男は嫌われるよ」  ストローを加えたままの大生に、二人は「そうだよね?」と共感を求めた。パッと口からストローを外すと、下唇を噛む。 (何て返したらいいんだろう)  大生はまだ、恋人と紹介されたところで止まっていて、先輩のことで頭がいっぱいだった。  失礼な内容な返事は何も思いつかない。 「……祥太郎先輩が好きなので、嫌いになることないです」  口から出てきた言葉は、何の捻りもない、ただの僕の素直な気持ちだった。  思わず溢れた言葉に、恥ずかしさが込み上げる。今さら取り消しもできない。 「ねえやばいって、可愛すぎでしょ」 「祥太郎さ、こんな良い子は他にいないから大事にしなよ」 「言われなくてもそうするわ」  良いものを見た、と言いながら二人は氷が溶けてしまったジュースを飲み干し、次の講義があるからと立ち上がった。  時計を見ると思ったより時間が過ぎている。せっかく楽しみにしていたクリームソーダを味わうことはできなかったけれど、不思議と大生の気持ちは満たされていた。  少しどろっとした感触になったクリームソーダをできるだけ急いで飲み干し、二人に続いた。 「大生くん、もし構内で会ったときはお姉さんたちとお茶してくれる?」 「祥太郎の面白エピソードとか教えてあげるからね」  二人は大生の頭を優しく撫でた。その手を祥太郎が払い、「俺のだから」と抱きしめる。  最初に会ったときは断ったハグも、今は自然と受け入れてしまった。 「じゃあまた後でね」  祥太郎は大生の後頭部に手を回し、わしゃわしゃと髪を撫でた。 「ひゃー、仲良しだあ」 「いいなあ」  三人は同じ講義を受けるらしく、並んで手を振ると、大生とは反対側の棟へと行ってしまった。 (はあー……、何だろう。この気持ち)  以前の大生なら、先輩と同じ学年で同じ学科の女子を羨んだし、その関係に不安になっていた。  けれど今は、そんな感情はこれっぽっちもない。ちゃんと恋人になれたんだ。

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