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再会の手紙。あなたに届きますように。
大真の質問に、響は高校生活を思い返してみた。そこまであからさまなものはなかったけれど、今の関係を知ると「あのときのあれも、そういうことか」くらいはあったかもしれない。
大真の代わりに慧司が問題を解いてあげる、みたいな些細なこととか。
「当時はさ、女子から慧司へのアプローチが凄すぎて、大真とどうのってのはなかったけど……。仲が良いなあ、とはよく思ってたよ」
「そっか、そんなもんか」
それなら良かったと、大真は安心した表情を見せた。
バレたくないと思いながら、それでも伝えたくなるのは分かる。
響は、コップの中の氷をカラコロと鳴らした。
(俺の場合は、タイミングをミスったけど。……まあ、ミスらなくても結果はダメだったかもしれないけど)
「で、お前、いつから慧司に片想いしてたわけ?」
パスタを食べながら油断している大真に質問を投げると、ゴホッと咳き込んだ。パスタソースが飛び散る。
「うえ、汚なっ」
「響のせいじゃん。てか、それ言わせる?」
「別にいいだろ」
「……まあ、中学くらいから」
「そっか」
「言わせといて、それだけ?」
「はは、ごめんごめん」
大真は言葉では嫌々答えていたが、表情は満更でもなさそうだった。中学の頃でも思い出したんだろう。
響はその姿を見ながら、黒崎のことを考えた。
(俺とあっちゃんだって、大真たちと同じだったはずなのにな)
「よし、じゃあ響のターンだな!」
祥太郎がドリンクバーから戻って来るなり、テーブルに勢いよくコップを置く。ガンッという音とともに、中のオレンジジュースが激しく揺れた。
「ジュース取りに行く間に忘れてしまってると思ったわ」
「俺の記憶力そんなに悪くないですが?」
冗談で流せそうにもない。響に仕返しができると思ったのか、大真まで前のめりになる。
「どんな話だって聞いてやるよ。俺も祥太郎もまさかで相手が男だったし、仮にお前まで男だったとしても、二次元キャラだとしても、超年上女性だったとしても、何も驚かん!」
どんと来い! と構えた大真を響が無言で見つめると、「え? さっきの中にあったの? どれ!?」と一瞬で混乱し始めた。
(はは、慧司はこういうところも可愛いと思うんだろうな)
「……どれだと思う?」
「響はアニメとか見るタイプではなかったから、二次元キャラはなさそう」
「となると、男か、年上女性か……」
大真と祥太郎はふたりで向き合うと、「高校のときに誰かいたか?」「大学で出会ったとしたら教授?」などと真剣に考え始めた。
(そんなに楽しい話じゃないのに。何も知らないで)
響は、話をしている二人をぼんやりと見つめた。段々と二人の輪郭が歪んでいく。
卒業してからも、あっちゃんのことを考えなかった日はなかった。
ただ、いつ取り出しても楽しかった思い出が、全てあの日に塗り替えられてしまった。笑顔のあっちゃんはもう浮かばないし、あっちゃんのことを考えるときは苦しい。
コップから滴り落ちた水滴を、響は指でいじって広げた。
二人はまだ、話し合いを続けている。
(興味本位かもしれない。でも……)
響は、言いたくない気持ちと、誰かに受け止めてもらいたい気持ちで揺れていた。話したら、少しは楽になるだろうか。
「……響? どうした?」
「……あ、いや、別に」
いつのまにか、大真が響の顔を覗き込んでいた。すぐ近くにあるのに輪郭は歪んだままだ。響は自分の目に涙が溜まっていることに気づき、前髪を直す振りをして手の甲で拭った。
「ごめん。俺ら勝手に盛り上がりすぎた?」
「話したくないなら無理に言わなくていいから」
響の様子のおかしさに、二人は慌ててフォローを入れた。例え興味本位だったとしても、二人は嫌がることはしない。こうしてすぐに気遣ってくれる。
(この二人になら、話してみようかな……)
響は、ふーと長い息を吐き、それから顔を上げた。
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