72 / 80
再会の手紙。あなたに届きますように。
「……男だよ。男で、年上で、幼馴染。お前らも知ってる人」
明るく楽しい雰囲気で話せない内容だと、表情や声色に出ていたのかもしれない。二人の顔が強張った。
「二人みたいに楽しい話じゃないし、長くなるよ。……それでもいい?」
ゆっくりと頷いた二人に、響はこれまでのことを話すことにした。
「相手は、数学の黒崎 先生なんだよね。実は幼馴染で」
「……あ、だからか!」
響の言葉にどこか納得してした様子で、大真が頷いた。
あっちゃんのことが好き以前に、幼馴染だとも誰にも言っていなかったはずなのに。
戸惑う響に、「実は……」と大真が言葉を続けた。
「響があっちゃんって呼んでるの見かけたことがあって……。友達みたいな距離感だったし、俺たちに見せるのとも違う雰囲気で……」
「……あ、見られてたんだ」
恥ずかしさが込み上げたが、すぐに消えた。
(だってもう、あの頃には戻れないし)
二人にも、そして慧司にもあっちゃんとの関係を話さなかったのは、話すことで境界が曖昧になるから。ずっとあっちゃんと幼馴染である自分でいたら、気持ちを隠せる自信がなかった。
「別に、幼馴染だったことも教えたくなくて黙ってたわけじゃなくて。何ていうか、俺の気持ちの問題で」
うまく説明できない響に、大真が察したような顔で相槌を打つ。
「何となく分かるかも。幼馴染として振る舞う自分をみんなに知られたら、スイッチが切り替わる瞬間がなくなるっていうか。切り替わらないから、止まれないって言うか……」
特に幼馴染は元々距離感も近いし、と付け足した大真に、響も相槌を返した。
(そう、なんだよなあ)
「元々家が隣で家族ぐるみの付き合いだったんだ。小さい頃からずっと片想いをしてたけどーー……」
響は黒崎とのこれまでのことを口にした瞬間、胸の奥に押し込めていたものが少しだけ崩れた。
「それで、高三のとき、あっちゃんの気持ちを無視して無理やりキスして、それで……逃げた。そこから今まで、一切会話してないんだ」
順を追って話をしていく間、二人は一度も口を挟まなかった。相槌さえ忘れたように、ただ響を見つめている。
飲み物を飲むタイミングもないまま、ファミレスの雰囲気には似合わない空気感で話が続いていた。
さっきまでの騒がしさとのギャップが、響の胸を潰していく。
(自分で話しておきながら、あっちゃんと終わったって現実を、押し付けられているみたいだ)
「本当はさ、卒業式に改めて先生に告白するつもりだったんだ。でも先生は別のクラスの担任だったじゃん? だから、当日は忙しそうだったし、気持ちを伝えることも、謝罪もできなかった」
無理にでも時間を作ることはできたかもしれない。でも、あっちゃんの気持ちを考えたとき、あっちゃんにとっても大切な卒業式を台無しにはできないという思いもあった。
でもそれも言い訳でしかない。自分が直面化して傷つきたくなかった気持ちのほうが、大きかったと思う。
ともだちにシェアしよう!

