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再会の手紙。あなたに届きますように。
響は、大学からすぐ近くのアルバイト先へ向かった。働き始めてから1年と少しが経つ。
響の自宅からは少し距離があるけれど、大学帰りに通いやすい場所を選んだ。
テスト期間の融通はきくし、客層も比較的穏やかな人が多く、残業もないから働きやすい。
スタッフもみな、優しい人ばかりだった。
「あ、響くん。良いところに来た!」
響が出勤するとすぐ、カウンターにいた店長が声をかけてきた。珍しく慌てている。何か問題でも起きたのかと、響はスタッフルームに行かずにそのまま店長のもとへ急いだ。
「ごめんねえ。今日みたいにいつも土曜日に来てもらってるけど、来週からしばらく日曜日に変更してもらっても良いかな?」
「え? ああ、シフト変更ですね。構わないですよ」
「それで早速なんだけど、明日も来てもらえる?」
「全然大丈夫です」
どうやら家庭の事情で、日曜日の勤務が難しくなったスタッフがいたようだった。
「土日どうしても無理なときはいつもみたいに休ませてほしいって頼みますけど、それ以外はいつでも空いてるので、どっちも出られますからね」
「いや〜、そう言ってもらえて助かるよ、ありがとうね」
「俺もいつも配慮してもらって助かってるんで」
響と店長が話をしていると、同じ大学の先輩がスタッフルームからひょっこりと顔を出し、「響が日曜なら俺もそうしようかなあ」と笑った。
「響くん、さすが。人気だね」
「いや……」
自分に対する好意が伝わり、響は胸がくすぐったくなった。
少し照れて恥ずかしい気持ちになりながらスタッフルームに行くと、土曜日固定の他のメンバーにも、響がしばらく日曜の勤務だと伝わっていた。
「土曜日が寂しくなるねえ」
「響いないとつまんなーい」
ロッカーに鞄を入れる響を、みんなが囲む。
「またそのうち土曜日に戻ってきますよ」
(ちょっと、気が紛れたかも)
響の口角も自然と緩んだ。
さっきまでの大真たちとの会話から、完全に気持ちを切り替えられたわけではなかったから、こうして温かな空気の中で過ごせることがありがたい。
去年以来の日曜日の勤務は、久しぶりなメンバーばかりだった。
響は初対面のときのような緊張感で、「よろしくお願いします」と挨拶をする。
「えー、響くんじゃん! 全然被らないから久しぶりだー!」
「あ、覚えててくださったんですか」
「当たり前でしょ? いい子は忘れないよ」
パートのお姉さんに笑顔で肩を叩かれ、響の緊張が少し飛んでいった。平日の午前と日曜日の勤務しかない彼女と会うのはいつ振りだろうか。
「聞いたよ、しばらく日曜日に来るんでしょ?」
「え? そうなの?」
「響くん、接客が丁寧だから助かるわ」
昨日同様に人が集まり、温かく響きを囲んだ。出勤してから五分もしないうちに、今日のスタッフ全員に話しかけられたかもしれない。
「本当ですか? ありがとうございます」
(こういうの、なんか嬉しいな)
響は、はにかみながらお辞儀をした。
◇
「あ、俺が片付けて来ます」
「助かる、ありがとー」
片付けに行こうとした先輩を引き止め、響が代わりにフロアへと出た。
退席したお客さんに「ありがとうございました」とお礼を伝え、響はコーヒーカップをトレーへ乗せた。ケーキの食べこぼしのくずを集め、最後に拭きあげた。
ーーカラン。
響がトレーを持ち上げたとき、背後で入り口のドアが開く音がした。
(新しいお客さんだ)
いらっしゃいませ、とカウンターにいた先輩が声をかけた。響も顔を軽く向けながら挨拶を済まし、キッチンへと戻る。
「せっかく今日から来てもらったのに、わりと暇な日だったかも」
洗い場に食器を置くと、店長が声をかけて来た。
「珍しいですね。天気が悪いからかな」
カウンターから少しだけ顔を出し、店内を見渡すと、確かに空席が目立っている気がする。
(土曜日でももう少し入るけどなあ)
キッチンへ戻るついでに、響葉ふと、レジのほうへ顔を向けた。
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