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再会の手紙。あなたに届きますように。
(……ん?)
レジで注文しているお客さんの雰囲気が、あっちゃんに似ていた。メニュー表を見ているその人の顔は、レジに立っている先輩の背中が邪魔してはっきりと見えない。
ーーまさかね。
「カプチーノで。あと、チーズケーキも」
「……っ」
洗い場に戻ろうとしたとき、聞き覚えのある声がした。思わず足が止まり、鳥肌が立つ。わざわざ振り向いて、顔を確認せずとも分かる。大好きな人の声を聞き間違うはずがない。
「あっちゃん……、何で……」
(もし俺が、片付けをしていなくて入り口近くにいたら? レジに入っていたら……?)
何の構えもない状態であっちゃんと鉢合わせることを想像すると、身体が震えた。
響がすぐ近くにいることに気づいていない黒崎は、淡々と注文をしている。
(もし俺に気づいたら、すぐに帰ってしまうはず。……そして、二度と来ないかも)
「響くん、どうした?」
かたまったままの響に、先輩が心配そうに声をかけた。
「いや、ちょっと知り合いが」
「あ、本当?」
興味本位か、先輩はカウンターから顔を出した。
「今お会計してた人?」
「はい」
「会ってくる? あの人ね、日曜日にけっこう来てくれるよ」
「……そうなんですね。会うのは、いったんいいです」
響の表情から察してか、「気まずいなら表に出なくていいよ」と言う先輩に、響は素直に甘えることにした。
「あの人が帰るまで、中でできることします」
響は洗い場に戻り、スポンジを手に取った。
(あっちゃん、何も変わってなかった……)
髪型も髪色も服装も、纏う空気も全て、あの日から何一つ変わっていないように見えた。
響は、握りつぶされそうなくらいに痛い胸を、拳でトントンと叩いた。視界は涙で滲み、鼻の奥がツンとする。
(ずっと会いたかったのに、それは違いないのに……)
会った日のことは何度も想像してきた。自分を見る軽蔑の眼差しや、怒りを含んだ声、他人のような距離感に、どう向き合うか。響はそればかり考えていた。
「こんな……急なのかよ……」
ぼそりと呟いた声が、水道から流れる水の音でかき消される。
(でも、どうして?)
響は次々に浮かぶ疑問で混乱し、スポンジに握る手に力を込めた。
日曜日にけっこう来るって、この店はあっちゃんにとってお気に入りなのか?
確かに店内は静かでくつろげるし、雰囲気も良い。駐車場も広いし、このカフェ以外にも周りには時間を潰せるスポットがたくさんある。
それでも、この店は響の大学から近い。入り口の窓側に座れば、視界に入るくらいの距離だった。
(俺の進学先を忘れた? もうどうでもいいってこと? 油断、しすぎじゃない?)
あっちゃんは何も言わずに引っ越していたし、残りの高校生活で話す機会さえ与えてもらえなかった。
おばさんにも「あっちゃん、今どこに住んでる?」とたった一言さえも聞けないまま、今に至るくらいだ。
それなのに、あっちゃんは響の生活圏内に来て、穏やかに過ごしている。
(じゃあ今まで何だったんだ? 俺に会いたくないんじゃないの? ……俺だけまだ、あの日で止まってるのに)
突然の再会のチャンスに、嬉しさでも不安でもなく、苛立ちが募った。
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