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再会の手紙。あなたに届きますように。
「幼馴染さんが、響くんの大学を知ってるとしたらだよ。こんなすぐ近くのカフェに来るかなあ」
「……まあ、知っていて会いたくないなら、来ないですよね」
「この店に来てまで見たい景色なんかないし、うちのコーヒーは美味しいけどさあ、それだけのためにこんな頻繁には来ないよ。よく来る人は作業目的も多いでしょ?」
言われてみれば、ただ外の景色を眺めるために来店する人はいなさそうだ。
目の前に海が広がっているわけでもなく、交通量の多い道路と、他のカフェ、書店、それから少し響の大学が見えるだけだ。
「そうかもしれませんけど、でも……」
「まあ、実際は分からないけどね。でもさあ、カフェはここ以外にもあるでしょ? それでもここを選ぶ理由を考えるとしたら、学生の利用も多いし、響くんに会えるかもって、期待もあるんじゃない?」
尚臣は、響にとって都合の良い解釈を伝えてきたが、不思議と嫌な気はしなかった。
尚臣が軽い気持ちで助言するタイプではないこともそれなりに分かっているし、日曜日にうちに来る黒崎について尚臣のほうが詳しいのは事実だ。
この考えに、縋りたい。
(声を、かけてみても許されるだろうか……)
でも、これでまた逃げられたら、今度こそ本当に終わってしまうんだろうな。
「俺のシフトが日曜日にかわったことも、チャンスだったのかも……。次に会えたら、思い切って話してみようと思います」
「響くんのペースでね。応援してるから」
「……はい、ありがとうございます」
話しかけてみると決意してからの一週間は、あっという間だった。
決意したらあっちゃんが来なくなる、なんて嫌な予感もあったけれど、その通りになることはなく、黒崎はいつものようにやって来た。
そして、注文を終えると、やっぱり今日も窓側の席に座った。
(こんなに席が空いてるのに、そこに行くんだ……)
響は、唾を飲み込み、喉仏を押さえた。
この一週間、何度も“次に会えたら”を覚悟していたつもりだった。それなのにいざ、黒崎を目の前にすると、自分を見る彼の顔を想像して身体がかたまる。
(……どうしよう。直接話すの、けっこう怖い)
けれど、カウンターに立ったり、近くの席で片付けをしたりして、あっちゃんに気づかれるのを待つのも違う。
他に何か良い方法はないかと考え、響は手紙を思いついた。
手紙のほうが動揺が少ないかもしれない。気持ちも届けやすいし、相手に読まない選択肢も持たせられる。
(そもそも手紙自体が、俺の勝手でしかないんだけど)
響はロッカーに行き、鞄からスケジュール帳を取り出した。手帳の終わりにある、メモのページをビリビリと切り取る。
何を書くべきかしっかりまとまったわけではなかったけれど、ゆっくりとシャーペンを動かした。
あっちゃん、と久しぶりに彼の呼び名を書く手が震える。
久しぶり、急にごめんねと、まずは謝罪から始めた。そこから先は何度も何度も書き直した。
たまたま見かけたこと、また話したい気持ちがあること、ずっと会いたかったこと、そういう気持ちを素直に書いた。
少しでもよく見せようとか、取り繕うつもりはない。子どもっぽいかもしれないけれど、今は素直であることが大切な気がした。
「響くん、手紙渡すの?」
書き終えた手紙を折りたたんでいる響に、尚臣が後ろから声をかけた。
「今日頑張るって決めたんですけど、勇気……出なくて。手紙になっちゃいました」
情けないですよねと、眉を垂らして元気なく笑う響の肩に、尚臣がぽんっと手を置いた。
「それ、すごく良い気がする。自分で渡す? 俺が渡しに行くこともできるよ」
「……いや、あの人がトイレに行くタイミングでテーブルに置きます。もし、そういうタイミングがないまま帰りそうなら、怖いけど、追いかけてみます」
「そっか。できそうなことがあったら言ってね」
「ありがとうございます……」
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