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再会の手紙。あなたに届きますように。
手紙を渡すまでにはしばらく時間がかかるはずという予想に反して、尚臣と話した五分後に黒崎が席を外した。
黒崎が座っている席までのたったの数メートルを歩くだけなのに、響の足取りは重かった。
(でも、渡すって決めたから……)
戻って来たときにすぐ目に入るよう、テーブルの真ん中に手紙を置いた。
良い反応をされるとは思っていない。ただ、あの日で止まっていた関係を、変えられるかもしれない一歩を踏み出せた。
どんな結果になろうとも、その頑張りだけは自分で褒めてあげよう。
数分後、席に戻ってきた黒崎はすぐに手紙に気づいた。手に取って、首を傾げる。
外側には何も書かれていないその紙を見て、明らかに戸惑っていた。
周りをキョロキョロと見渡し、得体の知れないそのメモが、自分宛なのかを気にしているようだった。
(あ……)
見て確認するしかないと思ったのか、黒崎は立ったままで、ゆっくりと手紙を開いた。
開いた瞬間、黒崎の身体がかたまる。
恐らく、一行目の“あっちゃんへ”という文字を見ただけで、響が書いたことは伝わったはずだ。
響は、黒崎がすぐに読むのをやめるかもしれないと覚悟していた。けれど、黒崎は手紙を閉じることなく、最後まで読んでくれたようだった。
バッ! と顔を上げ、黒崎は手紙を鞄のポケットに押し込んだ。カップにはまだ飲み物が入っていたのに、飲み切ることなく荷物をまとめ、店を飛び出して行った。
ガラス張りの窓からは、余裕ない様子で、左右を確認している黒崎が見えた。
(……あっちゃん。俺のこと、探してくれてる……?)
「尚臣さん、どう思いますか。……俺、行っても良いですかね」
震える声で尋ねると、尚臣は無言で頷き、響の背中を叩いた。
「すみません、少し抜けます」
「いや、今日はもうこのまま上がって! 大丈夫だから! 話しておいで!」
「……すみません! ありがとうございます!」
響は店のエプロンを外すこともせず、急いで黒崎の後を追った。
思いの外すぐにその背中を見つけた。
さっきまで走って追いかけていたその足が止まる。
(……怖いけど、行くしかない!)
響は、バチン! と頬を叩くと、大きく息を吸い込んだ。
「あっちゃん!」
久しぶりに声に出したその名前に、目頭が熱くなった。
声に気づいた黒崎が立ち止まり、勢いよく振り返る。
「お前、何で……!」
響はもう数メートルだけ走って、黒崎との距離を縮めた。あと十歩のあたりで止まる。
「俺、あのカフェでバイトしてて……! 最近あっちゃんが来てくれていることを知って。それで、迷惑だとは思ったけど、どうしても話したくて……!」
(あっちゃんが、俺を見てる……!)
響は、黒崎と目が合うだけで、これまでが報われたような気持ちになった。
ただ、それでもこれっきりになったらどうしようという不安のほうが強い。声がみっともなく震えた。
(でも、でも……! 俺は、今もあっちゃんのことが……!)
「あっちゃん……! 俺、卒業したよ。もう大学二年生だよ」
「……知ってるよ」
三歩だけ近づいたが、黒崎は逃げることもなく、響を見つめたままだった。
(また近くで顔を見て、話をすることが許される……?)
「あっちゃん……」
我が儘でごめん。自分のことばかり考えてごめん。
響は目をぎゅっと閉じ、唇を噛み締めた。自分を奮い立たせるために、拳に力を込める。
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