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2-1 表の王子様、裏の若様

 豊かで巨大な海上王国、ユートランティア。  海洋系獣人たちが住まうこの王国は、島国でありながら巨大な内海を有している。  首都マリーナスの中心には、巨大な内海を抱くユートランティア王立学園があった。  王族が代々その内海を保護してきたことから、人々はそこを『ロイヤルガーデン』と呼んでいる。  ユートランティア王立学園では、貴族の若者や優秀な若者たちが切磋琢磨していた。  そして、広大な王立学園の一室。  生徒会室の前には、人だかりができていた。 「オルキウス様……!」 「今日もかっこいい……!」  視線の先には、王立学園の生徒会役員たちの姿がある。  オルキウスと呼ばれた生徒は、騒ぐ生徒たちに気がつき、優しく微笑んで見せる。 「王子スマイル……!」 「さすがノワールヴル公爵家のご令息……! 品格が違う……!」 「成績も実技もトップクラスだなんて……」 「会長のアルシオン様とはまた違う魅力……!」  さらにざわめきが大きくなる。  すると、生徒会室の最奥のソファ──会長席に足を組んで腰掛ける男が鬱陶しそうに目をすがめた。 「閉めろ」  男のその一言で、扉の両脇に控えていた役員補佐たちが生徒会室の扉を閉める。  残念そうな生徒たちの声が、扉が閉まるのと同時に途切れた。 「……はあ。やっと静かになった」 「別に良いんじゃないか、アルシオン」 「……オルキウス。お前は本当に愛想が良いな」 「普通だよ」  アルシオンはふぅ、と疲れたように美しい白髪をかき上げた。シロナガスクジラらしく、堂々とした雰囲気がある。  オルキウスは苦笑した。白髪が混ざったか黒髪がふわりと揺れ、黄金色の目が細められる。 「シャチは本当に人気取りが上手いな。王族の俺よりもよっぽど王子らしい」 「……はは。お疲れみたいだな。俺が代わりに会議してやろうか?」  アルシオンにため息混じりに皮肉を言われて、オルキウスは肩をすくめる。 「それが良いんじゃない? オルキウスの方がピリピリしないしー」 「うるさいぞ、フィン」  イルカの会計、フィンが飄々(ひょうひょう)と口を挟むと、アルシオンがぴしゃりと一喝する。  フィンはすねたように口を尖らせて、女好きのしそうな顔をしらけさせた。 「事実なのになぁ」 「……そういえば」  ラッコの庶務、ルカが可愛らしく首を傾げた。 「昨日、料理研究部から苦情が来たんだけど……」  アルシオンがぴくりと眉を上げる。 「なんだ」 「カツアゲされたって」 「あはは。絶対暴れ鮫くんじゃん。相変わらずだね」  フィンが愉快そうに笑う。 「でもさ。暴れ鮫くん、別にお金困ってないでしょ? ホワイトファング家って侯爵家だし。なんでだろね」  フィンが首を傾げると、ルカが声をひそめた。 「それがさ、とられたものがちょっと問題なんだよね」 「え?」 「包丁。一本持ってかれたんだって」

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