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6-1 想定外
オルキウスは、目の前できらきらと赤い目を子供のように輝かせるレンを見て、目を見開いた。
差し出した手を震えながら握られる。その顔は紅潮していて、普段の荒んだ表情とはまるきり違っていた。
(なんだ、こいつ)
予測できなかった反応だ。
オルキウスはじっとレンを観察する。
声をかけた時は警戒するように睨みつけてきた。それは予想通りだった。
いつものレンなら断る。あるいは殴る。
なのに、今日は従った。
想定外だった。
これまでの『白き暴君』の暴れ鮫とは思えない。そして、極め付けは。
「友達になろう」
何かに気がついたかのように、目を見開いてアホみたいに口をぽかんと開き、顔を赤くさせていく。
「いいぜ!」
食い気味にばかでかい声で了承された。
(やっぱりこいつ、一昨日からなにか違う)
読心しても表層に浮かぶ感情は興奮ばかり。
怖れでも、敵意でもない。
「……あ、あのよ」
ぼうっとしていると、レンが遠慮がちに話しかけてきた。
ハッと我に帰る。
自分らしくない。ぼんやりするなど。
「なんだ」
レンは興奮冷めやらぬ様子で、首を傾げる。
(なんだ、その仕草は)
暴れ鮫らしくない。一瞬、思考が止まった。
レンは、おずおずと口を開く。トレードマークのギザ歯がちらりとのぞいた。
「……友達って、何すんだ?」
いろいろ考えきた答えはあった。だけど、不意を突かれすぎて、うまく答えられなかった。
「……じゃ、じゃあさ」
ごくりと、レンが喉を鳴らした。
「……い、一緒に、泳ぐとか……どうだ?」
上目遣いでこちらをうかがってくるレンに、なぜか胸の奥がざわついた。
「うおおおおー!!! シャチだーーーー!!!」
一時間後。
オルキウスは、内海でなぜかレンに海獣化した姿を見せていた。
「そんなに……嬉しいのか?」
海獣化した姿を人に見せるのは何年振りだろうか。
レンは溺れているのかと思うほど興奮してばしゃばしゃとはしゃいでいる。
「当たり前だろ!! シャチだぞ!? すっげえ綺麗!! 背びれでけえ!! 模様かっけえ!!……てか、十二メートルはあるだろ!?」
レンはひたすら「この光沢! ツヤ!」とか言いながらぐるぐるとシャチの姿になったオルキウスの周りを泳いでいる。
「ちくしょー! なんでスマホがねえんだよ!!」
たまに意味のわからないことも言っている。
オルキウスはその熱狂振りに思わず引きかけた。
なぜだ。
目の前にいるのは最恐の暴れ鮫のはずなのに、興奮して早口になっているオタクにしか見えない。
目をゴシゴシと擦りたかったが、シャチの姿になっているのでできなかった。
目を輝かせて、顔を真っ赤にしながら、レンは恐る恐る口を開いた。呼吸が荒い。
「ちょ、ちょっと……ちょっとで良いからよ……っ。さ、さわ、触っても良いか……っ!?」
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