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エピローグ
「――で、めでたくお付き合いが始まったわけか」
「ま、まぁな……」
朝のHR前の時間、前の席の鳶田に言われ俺は恥ずかしながら頷く。
その日、ようやく梅雨明けが発表され、朝から酷い暑さだった。
「そっか、そっか。そりゃおめでとう……と、言ってやりたいとこなんだがな」
鳶田が俺の横を指差した。
「これはいいのか?」
指差されたのは、俺の席の横に自分の席をぴったりとくっつけて座る蓮だ。
留学の出発は夏休みに入ってかららしく、それまではちゃんと登校することにしたらしい。
そんな蓮が満面の笑みで答える。
「いいに決まってるだろう? 付き合ってるんだから。ねぇ、ちゅんの」
「よくねぇっ! 暑ぃから離れろバカ!」
ぐーっとその肩を押しやり怒鳴るが全然効いていない様子で腹が立つ。
何が最悪って、クラス中の視線がこちらに釘付けになっていることだ。
気温もバカ高いというのに恥ずかしさで全身熱くてまた熱中症でぶっ倒れそうだった。
「えぇ~。だってもうすぐお別れなんだよ?」
「一ヶ月だけだろうがよ!」
「一ヶ月だって僕はちゅんのと離れたくないのになぁ」
「そういう恥ずかしいことを言うんじゃねー!」
そんな俺たちを友人が半眼で眺めていて。
「俺は一体何を見せられてんだ?」
「鳶田頼む! 引かないでくれ!」
慌てて友人の腕を掴むと、蓮が俺のその手をやんわりと取って自分の元へと引き寄せた。
「そうそう、僕、鳶田にずっと言いたいことがあったんだ」
「あ?」
目を瞬く友人に、蓮がお得意の爽やかイケメンスマイルで続ける。
「ちゅんのの友人枠は譲るけど、恋人枠は絶対に譲らないからね」
「わー、なんか俺牽制されてる?」
「何言ってんだよ蓮!」
どさくさ紛れに握られた手を振り払って叫ぶ。
本当に勘弁して欲しい。
鳶田は俺の貴重な友人なのだ。鳶田に引かれたらガチで辛い。
「というかさっきから気になってんだけど、ちゅんのって何? 雀野のこと?」
「そ、それは」
「小学生の頃のあだ名だよ。可愛いでしょ? でも今呼んでいいのは僕だけだから」
「あ、左様ですか」
「お前は~~っ」
辛抱たまらなくなって蓮の首を締めに掛かっていると、ふっと横に影が出来た。
「三鷹くん、良かったね!」
「本当におめでとう!」
そう祝福の言葉を掛けてきたのはこの間のギャル連中だった。
何やら涙目になっている子までいてビビる。
「幸せになってね!」
「うん、ありがとう皆!」
嬉しそうにお礼を言う蓮を最早呆れ顔で見ていると。
「雀野」
「え?」
ギャルたちが一斉に俺を睨んでいてギクリとする。
「三鷹くんを泣かせたら、あたしらが許さないから」
「覚えといて」
そう怖い顔で言い残し、彼女たちは颯爽と去っていった。
「……なんなんだよアレ」
「有難いよねぇ」
「どこが」
「でもさ、泣くのは僕じゃなくてちゅんのの方だよね」
「は?」
「昨日も涙目になってたし、すご~く可愛かったよ」
「――!?」
その意味を理解して、昨日のあのキスを思い出してぶわっと顔の熱が上がる。
「え、お前ら、もうそういうことしちゃってんの?」
「し、してねーし! だから引くな鳶田ァ!」
「ご褒美、楽しみだなぁ~」
「お前はほんと少し黙ってろ!」
……やっぱり、俺は選択を誤っただろうか?
でもこの賑やかさが、なんだか少しあの楽しかった日々を彷彿とさせて。
(悪くはない、かも……?)
しかし。
「ちゅんの」
「え?」
隣を見ると、蓮が甘く目を細めていて。
「好きだよ」
「!?」
「ふわーお、友人の前で大胆!」
「~~っ、お、俺は、やっぱお前なんか好きじゃねーー!」
やっぱり「好き」は、まだうまく言えそうになかった。
――これまでとは少し違う、本格的な夏が始まろうとしていた。
END.
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ここまでお読みいただきありがとうございました!
本編はこれにて完結となります。
次話から後日談(ぬるい性描写あり)となります。
引き続きお楽しみいただけたら幸いです!
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