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第13話 間違い

 成瀬は、自分の中で規則的に動くものを締め付けながら、何度目かの吐精をする。  息切れの間でも、動きは規則的に成瀬の良い場所を刺激してきて、息をする間が見つからない。  初めは高瀬のものとの違いがあまり感じられなかったが、スイッチを入れた瞬間に、激しい快感に飲まれ、あっという間に何回も果てさせられた。  高瀬は満足をしているのかと見れば、目尻を下げて何故か辛そうな顔をしている。  成瀬は心配になるが、中で動く物に意識を持っていかれ、体がまた反応し始めた。 「あぁっ……ぅんっ……やだ……ダメ……」 「……ケン……」  成瀬はもうやめてくれと根を上げて高瀬を見る。  しかし、高瀬は辛そうな顔のまま、スイッチを一段強くした。 「やあぁっ!……あぁっ……シンさ……ヤダッ……ヤダァッ!」  体の中を規則的に動き回り、的確に良いところに当たって、快感を引きずり出す物を、成瀬は無意識に強く締め付けてしまう。  高瀬は成瀬の反応に、悔しそうな顔も覗かせながら、さらに奥へと物を押し込んだ。 「ダメっ……んぁっ……シンさ……ちが……ほんとにやだ!!」  以前、成瀬が行為中に言う否定の言葉は、全て肯定の意味を持っているのだと高瀬に言ったことを思い出す。  しかし、今は本当にやめて欲しいのだと、叫ぶように高瀬に手を伸ばし、意図せずに涙が流れた。  高瀬は困惑しながらも成瀬の涙を見て、スイッチを切る。  成瀬の体がビクビクと震えながら、果てられなかった熱を治めようと呼吸を繰り返していた。  ポロポロと溢れる涙は止まらず、引き抜かれても求めるようにひくついている場所に気付いて、成瀬はさらに涙をこぼす。 「これ……嫌です……無理やり、イかされてるみたいで……シンさんが、いい……」  グズグズと鼻を啜りながら、成瀬は涙でいっぱいの目で高瀬を見つめる。  そこで初めて、高瀬は自分が成瀬の望みを履き違えていたことに気付いた。  握っていた物を放り、咽び泣く成瀬にかける言葉を必死に探す。 「Mon Dieu...Je suis désolé…」 「え?」 「Ça va…?」  必死に謝ろうとするが、成瀬には全く伝わっていない。  成瀬の肩を掴み、真剣に見つめようとするが、目が泳ぐ。  どう言えば良いかと、考えれば考えるほどに日本語が出てこなかった。  成瀬は、何故かパニックになっている高瀬へと手を伸ばした。 「も……抱きしめて、ください……」 「Oui.」  高瀬の腕の中で、成瀬はまだしゃくりあげている。  少しだけ、小刻みに震えている指先に気付いて、本当に悪いことをしたと思った。 「Je ne voulais pas te faire pleurer…」 「……なんですか?」 「………………」  高瀬は伝わらない言葉をもどかしく思いながら、成瀬を抱きしめる腕に力を入れた。 「sorry……」 「ごめんなさいって言ってます?」  成瀬の言った言葉に、ようやく高瀬の力が抜けた。 「あぁ、悪かった……傷つけるつもりはなかったんだ」  スラスラと日本語が出てきて、成瀬の顔を見れば、はにかむように微笑んでいた。 「傷はついてません。気持ちは良かったです……でも、やっぱりシンさんのが一番良いです」  成瀬は恥ずかしそうに、だんだんと声を小さくしながら、高瀬の下半身へと手を伸ばした。  成瀬の痴態を見ながら昂っていたものは、いつの間にか勢いを失っていて、成瀬の手の刺激にピクリと高瀬の体が跳ねた。 「こっちに当てても気持ちいいんですかね……」  顔を赤くしながらも、成瀬は若干興味があるのか、高瀬のものを扱き始める。  しかし、高瀬の勢いは復活しなかった。 「あ……俺、泣きすぎたから……」 「違う!」  成瀬は熱の集まらないものを手の中で柔らかく刺激しながら、ごめんなさいと呟いた。  高瀬は申し訳なさに奥歯を噛み締め、観念して言った。 「悪い……本当は、前からかなり無理してたんだ……」  悩んでいた事を打ち明けて、二人で解決したいと、言葉を続けようとしたが、成瀬の顔からは表情が消え、先ほどとは違う大粒の涙が流れ始めた。 「ご、ごめ……なさい……俺……気付かなかった……」 「違う、そうじゃない……」  成瀬を抱きしめようとするが、成瀬は身を引いて、ベッドの端まで後退し、ごめんなさいと繰り返した。  高瀬は、初めて成瀬と愛し合おうとした満月の夜を思い出す。  また、あのすれ違いはしたくない。 「お……俺……我慢します……我慢するから……」 「言うなっ!」  成瀬が言おうとした言葉を、高瀬は大きな声で遮った。  言わせてはいけないと、そう思ったのだ。  高瀬の声に、成瀬の体が大きく跳ねた。  その目に、不安と恐怖が混じっている。  そうじゃない、ちゃんと話し合わなければいけない。  高瀬はゆっくり息を吐いて、自分の心を落ち着けると、成瀬に微笑む。 「ずっと一緒だ。ケン……そうだろ……?」  自分で言いながら、そうあってくれと願いもこもっている事に気が付いた。  しかし、高瀬には成瀬に委ねる言い方しか出来なかった。 「ごめん……なさい……」  謝りながら小さく身を縮めていく成瀬に、高瀬はもう、触れることも声をかけることも出来なかった。  理央への嫉妬が胸につかえたままでは「そばにいる」「信じてくれ」と言う資格が、自分にはない気がした。  この気持ちが大きくなれば、きっと成瀬を傷つける事になると、そう直感したからだ。  リビングでは、満月がケージの扉を齧っていた。

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