早朝８時、指定されたさびれた工場が連なる東京郊外。光沢のあるライトグレーのスーツに濃紺のYシャツ。シルバーとマリンブルーのストライプのネクタイにサングラスの黒龍は少し長めの髪をジェルで撫でつけ後ろに流している。 　濃い目のサングラスは、サファイアのような深いブルーの瞳を隠すためだ。 　指定された場所で車から出ずに待機する。５分くらい待っただろうか。前方から外国車が近づいて来た。さもヤクザが好みそうな車だ。 　黒龍の横に着けると窓を下ろす。 「今から１時間ほどドライブに付き合ってもらいます。付いて来て下さい」 　２０代前半と思しき若い男がそう言って、車をUターンさせた。田中か的場のどちらかだ。 「はいはい、了解」 　確認もせずにそう告げられたという事は自分の顔も知られているのだと納得する。アクセルを踏み後を追った。 　東京に戻る様子はなく、埼玉と東京の県境の山中に車は移動しているようだった。射撃場の看板が目に入ってくる。世羅が経営しているものだ。 　あの若い男が告げた通り、山道を走り、１時間のドライブ後到着したのは予想通り世羅の射撃場だった。駐車場を通り過ぎ、裏へ回ると射撃場が見えて来た。その近くに駐車する。 　男が二人待ち構えていた。一人は側近の志野、そして世羅だ。 　黒龍は車から慎重に降りた。相手が近づいてくるまで動かない。しばらく様子を見ていると志野の方が近づいて来た。写真で見た通り神経質そうなインテリな風貌だ。１７５センチくらいの身長、細身だが、鍛えているには違いない。顎は女のように細く、唇も薄い。二重の双眸は大きくもなく小さくもない。パーツ的には大したことはないが、配置がいいのか色男だった。