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第18話 第四章(2)

「世羅さんの……護衛です」 「ひぃひひっ、くはぁはははっ――」  つんざくような高音の笑い声が響く。黒龍は体の前で左手で右手を押さえる形で仁王立ちしびくりとも動かなかった。黒いサングラス越しに相手を観察する。今、仮に暴挙に出て銃を取り出したとしても勝算はこっちにある。嘉納組の誰もが、松尾を警戒しているのは明らかだった。 「てめぇ、名前は?」  黒龍の目の前に立ちはだかった松尾が言った。 「黒龍です」 「ふん、黒龍ね。それで世羅の護衛が務まるとは……世羅も耄碌したものだ」  癇に障る高音の笑い声。もう二度と聞きたくないと黒龍はにやりと笑った。その笑みを見た松尾がにらみつけてきた。 「お言葉ですが、自分は外人部隊出身の軍人上がりで、護衛は実は初めてですが、闘争となれば実力を発揮できるかと思います。世羅社長はそれを見越して自分を配属されたのかと思います」  松尾が唾を呑み込むのを目のあたりにして至極爽快な気分を黒龍は味わい、勝利の笑みを漏らしそうになったが、寸前で我に返った。  相手を煽りすぎるのは良くない。  無表情のまま松尾をサングラス越しに見据える。凍り付いたような空気が漂っていたが、黒龍にとっては意に介するほどのことではない。 「ふん、なるほど、今回は組長が世羅を呼んだのだということで、後に引いてやる」  タンカを切って松尾が部下を引き連れ立ち去った。嘉納の部下は壁際に行儀よく並び、微動だにしない。  松尾が立ち去って初めて黒龍は片方の口角を上げ、含み笑いをした。だが、だれもそれに反応する者はいなかった。  世羅が出てきたのはそれから5分後だった。  何も言わずにさっさと歩きだす。黒龍もそれに続いた。嘉納組の部下へのねぎらいの言葉など皆無だったことに極道についてほぼ無知な黒龍でさえ少々うろたえさせられた。  世羅はどうやらアウトローらしい。一匹狼が番長に気に入られている。なぜなら餌を提供し続ける使える犬だから――。  松尾に会った後では、あの男が時期組長になる可能性はかなり低いと確信した。勝算は桐生だ。これは志野の意見、分析結果で明らかではあったが現場を目にして改めて信憑性に確信が持てた。 「純奈の店に行ってくれ」  車に乗り込み、エンジンをかけたところで世羅が黒龍に告げた。 「了解」  車に設置されているGPSを起動させ、純奈の店を探す。確か、ミックス&ホットとかいうチンケな名だった気がする。 「六本木のミックス&ホットでしたっけ?」 「違う、ミックスハイホットだ」 「ああ、了解」  打ち込むとすぐに出て来た。黒龍はアクセルを踏み込み六本木へ向かった。

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