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第21話 第四章(5)

 ナタリアが黒龍から体を離し少し離れて座りなおした。黒龍の意識は世羅だけに向けられている。  純奈の口に血管が浮き出た力強い怒張が呑み込まれていく様子を見ているだけで達してしまいそうだ。  自分がそれをやっているのを想像すると心臓が得も言われぬ速さで打ち付け始めた。世羅は黒龍を見ていた。純奈の髪を指に絡めたり、すくようにしながら弄ぶが、視線は黒龍の顔に向けられている。  黒龍が純奈の奉仕に恍惚となってもの欲しそうに見つめていたのも見られていたのだと思うと、爆発寸前の欲望はスーツのスラックスを突き破ってしまいそうなほど屹立し、呼吸に合わせてビクンビクンと揺れては硬く大きく成長する。  次第に息遣いが荒くなり、口を開けているせいで唇が乾燥する。無意識のうちに舌で潤すように舐めていた。世羅が片方だけ口角を上げて、目を細めた。いつものニヒルな表情だが、今は艶があり、男の色香に溢れている。  L字型のソファの斜め横に座る男の横へ素早く移動すると黒龍は世羅の顎を掴んで唇を重ねた。  世羅の体が硬直したのを感じたが、黒龍の欲情は止まらない。  唇を啄ばむようにし、舌先で唇の隙間をつつくように刺激する。  唸るような世羅の声と共にわずかに唇が開き、黒龍はその隙間に舌を滑り込ませた。片方の手を首筋から胸元へ滑らせながら、舌を絡めとる。欲情は増すばかりで歯止めが利かない。  舌先が痺れるように感じ、唾液が絡まる音に興奮が増す。Yシャツのボタンを外し、手を中に入れる。世羅の肌は滑らかな鞣し革のような感触だった。体毛はない。尖った乳首を指の腹で擦るようにして刺激した。世羅が喉で唸る。背筋が震えたのを黒龍は感じた。  なかなか感度がいい。  それもそうだろう。女にしゃぶられ、男とは言えディープキスをされ乳首をこねられているのだ。感じないわけがない。  世羅はホモファビアだと思っていたが、黒龍のキスを受け入れていることからそれほど同性愛に対して嫌悪を抱いていないと感じ、黒龍は嬉しくなった。  世羅の体温が上がったのを感じる、興奮で低い喘ぎ声を漏らすがそれは黒龍が呑み込んだ。  舌を絡ませ、時折強く吸う。そうすると世羅が背筋を仰け反らせる。  拒むことは可能だった。それをせずに快楽に身をゆだねる世羅に黒龍は感動していた。  熱い吐息を漏らしながら舌を絡ませる淫靡なキスに没頭する。世羅が何度か体を震わせた。絶頂と同時に体が硬直している。黒龍はキスを止め両手で世羅の頬を包み達している男の表情を見つめた。  瞳孔が開き、潤んでいる。荒々しい息遣いで胸が激しく上下し汗が首筋に流れ落ちていく。得も言われぬ妖艶な痴態に黒龍は息を呑んだ。  じゅる、ずる  淫靡な音をさせ純奈が最後の仕事をしている。世羅は恍惚とした表情で黒龍を見据えていた。 「キスが上手いな、黒龍」  にやりと笑い世羅が言った。  意表を突かれたことには違いない。まさか、こんなあっさりとかわされるとは思いもよらなかったのだ。 「それはどうも、気に入ってもらえてよかった。いつでも相手になるよ」  世羅が呆れたように笑いながら首を横に振る。 「男とキスをしたのは初めてだ。しかしそれ以上をする気はない」  なるほど、黒龍にとってはキスをする相手は至極限られている。ここ数年キスをした相手などいなかった。体は欲望のはけ口としてセックスを要求し、黒龍はそれに素直に従ってきた。しかしキスしたい、いや、欲情をあらわにしたディープキスをしたいと思う相手は現れなかったのだ。  今、体よりも先に欲しいと思えた男とディープキスをしてしまったことに黒龍は後悔していた。相手は取引先と言うだけでなくノンケだ。馬鹿だと自嘲する。 「ま、気が変わったら言ってくれよ」  軽い口調で受け流し、虚しさに押しつぶされそうになる気持ちを誤魔化した。

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