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第25話 第五章(4)

 ハプニング続きの一日が終わり、世羅と志野を後部席に乗せた車を、マンションの地下駐車場に駐車する。  21階直通エレベーターに3人で乗り込む。到着するまで無言だった。21階で降り世羅がドアの鍵を開けると二人に振り向いた。 「今夜は純奈が来る。だから出かけない。もう帰っていい。ご苦労だった」 「ちょ。ちょっと待った。念のため、部屋は調べる」  黒龍が世羅の体を押し、強引に中に入る。世羅は反論する様子はなかった。隅々まで確認を終えて玄関に出た時、まだ世羅はそこにおり、志野と話し込んでいた。 「異常なし、どうぞ」  黒龍が入るように促すと世羅はやっと黒龍の方へ顔を向け同意を示すように事務的に頷いた。  志野と二人で階段を使って下りる。 「うちで飯でも食って帰るか?」  気を使ってくれているのだろうか? 労わるような視線を志野に向けられ気分が急降下した。 「いや、今日はもう部屋に帰って寝るよ」 「そうだな、お前はよくやったよ。ご苦労さん」  志野ではなく、世羅から聞きたかった労わりの言葉だった。そんな風に思った自分に黒龍はげんなりとした。  部屋に戻りソファにどさりと腰かけるともう動きたくなくなるほど疲れ切っていた。それでもスマホを取り出しアルジュンに電話をかけた。ワンコールで通話になる。 「白蛇が連れてった男、どう?」  単刀直入に聞く。 『今、レンが聞き出してる。何かわかったらメールするよ』 「オッケー、よろしく」  通話を切ってソファにもたれかける。この時間まで大したことを吐かないとなると、あの男はプロなのかもしれない。プロの殺し屋にしては少々お粗末だが、標的がヤクザのフロント企業の社長なら簡単な仕事だと踏んでいたのかもしれない。  ピンポーン  思考を遮る玄関のベル。これは直接ドアの向こうから鳴らしている音だ。一体なんだって言うのだ。今日は厄日か? 10歳まで日本で育っている黒龍は厄日の意味くらいは知っていた。  動きたくないと駄々をこねる気持ちに鞭を打ち、起き上がると玄関のドアスコープを覗く。そこにいたのは純奈だった。

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