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第31話 第五章(10)

 感情が先走りお互いの唾液が口の端からあふれ出すほど激しいキスをつづけた。  不意に世羅の手に力が入り、顔を引き離され唇が離れ不服の呻き声が漏れた。激しい息遣いで胸を上下させながらも視線は離さない。  世羅の瞳は確かに欲情にぎらつき、潤んでいた。そのくらくらする男の色香に黒龍はひれ伏したくなる。  憎しみでも何でもいい激しく凌辱されてもかまわない、今目の前で自分を見る男が欲しい。  それが黒龍の今の気持ちだった。  腰に回した手の力を緩めずに熱い股間を擦り合わせる。 「やろうぜ、世羅さん。好きなだけ俺に怒りをぶつければいい。全部受け止めてやる」  欲情で声が上ずり、掠れているようにも聞こえる。  何が世羅のスイッチを押したのかはわからない。その言葉の後、世羅は唸るように咆哮し、黒龍をベッドに押し倒した。  黒龍の上にまたがり、ネクタイのノットに指を掛け引っ張り緩めて外し、Yシャツのボタンを引きちぎるようにして外すとジャケットごと脱がした。滑らかな肌が露わにされる。世羅の目が胸元で止まった。黒い龍が牙をむき今にも乳首に喰いつこうとしている入れ墨に世羅が指先で触れた。黒龍の体は龍と同化したようにゾクリと反応してしまう。世羅が龍の頭を撫で頬をなぞり、牙をむいている口から顎をなだめるように触れてくる。  黒龍はぐっと唇を噛んで声を堪えた。そうでもしないと熱いため息が漏れてしまいそうだった。 「くぅ……ぅああっ」  乳首を抓られ、背中が仰け反り堪えていた声が漏れたと同時に体を反転さられ、うつぶせになる。背中には斜めに龍が這っている。 「見事だな。日本で彫ったのか」 「いや、ロシアで」  世羅は黒龍の両腕を掴むと腕を後ろ手にし、ネクタイで拘束した。黒龍は一切抵抗しなかった。むしろ、興奮さえしていた。世羅の獣の一面が見れるのかと思うと、期待で鳥肌が立つほど煽られていたのだ。  もう一度ひっくり返され仰向けにさせられると縛られた両手で腰が浮いた。ベルトを外されるとスラックスを引きずりおろされる。黒いビキニは屹立した雄が苦しそうに生地を押し上げて今にもウエスト部分から外に顔を出そうとしていた。  太ももには龍の尾が絡まるようにして巻き付いている。世羅がまた指先でそれに触れた。ぞくりと甘い痺れが広がり、その度にビキニの下で興奮した男根がビクンと震え大きく形を変えていく。 「苦しそうだな。お前に前戯は必要なさそうだな。俺はこの龍にすっかり欲情させられた」  世羅の低い声が腹の底に響き、尾骨から背中に電流が走ったような痺れが駆け抜ける。喉をさらけ出して反らし、ぐっと唇を噛んだ。興奮で瞳が潤んでいるのを自覚する。堪らなく欲しい。激しくされる方が尚更いい。  世羅が黒龍のビキニに手をかけ引きずりおろす。解放された雄が跳ね上がり腹に透明な滴を落とした。それを見られ、体中を視線で愛撫されているように感じ体温が上がる。快感を知り尽くした後孔が疼き始めた。  世羅が自分のシャツのボタンを外し脱ぎ去ると、美しい筋肉が露わになった。浅黒い肌はなめし革のような艶があり、胸の隆起は男らしく、肩から上腕二頭筋の筋肉の盛り上がりはギリシャ彫刻のように完璧だ。引き締まった腹部まで体毛はほとんどない。  世羅がベルトを緩め、スラックスと下着を一気に脱ぎ去った。ベッドから降りナイトテーブルの引き出しを開け、避妊具を取り出す。それらの行動を黒龍は目で追った。  男とのセックスは初めてに違いない。アナルに入れることくらいは知っているだろうが、解さなければいけないとか、ローションを使う必要があるとは知らないはずだ。そういったことを今説明して世羅の気持ちに水を差してしまうことを黒龍は躊躇した。  乱暴に扱われてもいいと思うほど興奮していることもあり、このまま傷つけられてもかまいはしない。  世羅が黒龍の体をひっくり返しうつぶせにさせた。尻を持ち上げる。 「挿れるぞ」  欲情を孕んだ男の声はいつも以上に低く掠れていた。黒龍は力を抜くことに気を取られ返事さえできなかった。

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