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第32話 第五章(11)

 先端を擦りつけるようにされ、背筋が震える。腕を縛られていなければ、自分で解していたのにと後悔したが後の祭りだ。もうこのまま思い切り貫いてほしい。それほど中が疼いていた。  クチュクチュと、体液を擦りつけられる音に、かっと体温が上がる。何度か入り口を擦られた後、ぐっと圧迫感のある熱が押し入ってくる。黒龍は唇を噛んで声を抑えた。額をシーツに押し付け深い呼吸を繰り返した。  息を吸うごとに世羅が奥に入ってくる。堪らなく熱い。痛くて熱くて、震えるほどの痺れが脳天まで突き抜けるのに、もっと激しい抽挿が欲しい。ずんと奥を突かれ背中をしならせ、黒龍は思わず呻いた。  腰を力強く掴まれると、叩きつけるように激しく動かれる。瞼の裏に星が飛ぶほどの強烈な痛みに冷汗が噴き出した。徐々に痛みが熱になり痺れるような快感に変わる。 「うっ……くぅ……ああっ……」  息を吐くたびに喘ぎ声が漏れる。 「くっ、堪らない。お前の龍が喜んでうねっているように見える。気持ちいいか?」  ずんと奥を突かれ背中が仰け反った。黒龍の雄の先端から涙のように透明な滴が零れ落ち、シーツを濡らしている。 「ああ……いい、たまんねぇ……もっと、もっと激しくして――くぅああっ――」  拘束された腕を掴まれ引っ張られ、少し体が浮いた状態で激しく動かれる。もう喘ぎ声を止めることはできなかった。恥ずかしいほどの嬌声を上げ黒龍は吐精した。 「はは、派手にいきやがったな」  空いている片方の手を前に回し、黒龍の男根を掴んだ世羅はそれを扱き始める。達したばかりだと言うのにまた硬さを取り戻している。陰嚢を程よい力加減で揉まれ、その裏にあるアナルまでの筋を指で擦られると亀頭の先端の孔からぷくりと蜜が溢れてくる。尻が震え世羅の雄を締め付けてしまう。 「く……いいっ、たまんねぇ……せ、世羅……も、もっと……動いて」 「まったくお前は……淫乱め」  吐き捨てるように言うと、世羅は腰をグラインドさせた後、抽挿のスピードを上げる。世羅の激しい息遣いを首筋に感じた後、肩に噛みつかれた。 「くぅ……ああ――っ」  目も眩むような快感に襲われる。半透明の液体がだらだらと先端から流れ続け快感は収まることなく、黒龍を追い込んでいく。  世羅が思い切り黒龍の肩を噛み、声を押し殺して達した。その激しい揺さぶりに瞼の裏がちかちかする。  黒龍は喘ぎながら体の力を抜き背中の男にもたれた。  腕の拘束を外されると、ずるりと熱い塊を抜かれる。ひくひくと孔が痙攣しているのを自覚した。  世羅がベッドから降りるのを横目で見ていた。シャワーを浴びに行くのだろう。その間に、ここから去った方がいい。  黒龍はまだ震えるように痺れる身体を叱咤し脱ぎちらかった服を集めた。ボタンがちぎれたシャツの袖に腕を通し、くしゃくしゃになったネクタイはジャケットのポケットに突っ込む。下着とスラックスをはくと、逃げるように部屋を後にした。  正直、嫌悪に歪む世羅の顔など見たくなかった。大概ノンケは初めて男と関係を持つと落ち込み、怒り、相手のせいにする。  怒りを向けられることに対処出来ると思えなかった。  重くまだ疼く体を引きずるように黒龍は非常階段を降りていった。

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