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第47話 第七章(6)

 日曜日、東陣会嘉納組長の葬儀は警察の厳重な警備が敷かれるなか行われた。葬儀出席者はおよそ一千人にも及んだ。  世羅は自分の組を持っているわけではなく、一企業の社長として志野と参列したに過ぎなかったが、世羅の毅然とした態度、風格は極道のどの男たちよりも際立っているように黒龍には見えた。世羅のまとう空気は危険な静寂を感じさせる。深夜の森のような不気味な冷たさがあった。暗くそして骨の芯まで凍えそうな冷たさ。触れると牙を向き襲い掛かってきそうな一触即発の危険な空気だ。黒龍は世羅の冷たい静寂に心を惹かれていた。  傍にいればいるほど、世羅を知れば知るほど欲しくなる。レンに対して持っている尊敬の念や憧れではない。もっと強く魂から惹かれ、抗うことが出来ない強い何かを世羅に感じていた。この男に憎しみの視線を向けられることはあっても心を開いて接してくることはまずないという事実に打ちのめされそうになる。愛されたいと思う気持ちはなかった。それは黒龍には必要ない。ただ一時の快楽の為だけであっても求められたい。それだけだった。  世羅をマンションの部屋に送った後、黒龍と志野はそれぞれの部屋に戻った。 やっと葬式がおわり、黒龍は肩の荷を下ろした気分だった。早く服を脱いでシャワーを浴びすっきりさせたい。  時期組長争いの真っただ中にいる桐生には護衛が就いていた。それもトゥルー・ブルーのメンバーの海斗かいとだ。国籍はフランス人だが、中国系移民なので東洋人の外見のため日本人に混じっても何ら違和感がない。トゥルー・ブルーのメンバーは皆フランス外人部隊での仲間だが、それ以前の経歴も目を見張るキャリアを持っている選りすぐりのエリート兵士だ。  そして、今一番危険な立場にあるのは桐生に違いなかった。  時期組長争いの抗争が起こるかどうかを予言することはできない。そんなことを考えても無駄なだけだとその思考を払拭し、裸になってシャワーブースに入った。  タオルで体を拭いていると玄関のチャイムが鳴った。タブレットを取り画面を確認する。ドアのチャイムが鳴るとタブレットで画面を確認できるように設定したのだ。  急いでハーフパンツだけを身につけ1階に降りる。  玄関を開けると世羅がウィスキー片手に立っていた。 「入っていいか」  と、ボトルを掲げる。黒龍は頷きドアを大きく開け入るように促した。  珍しいこともあるものだと、少し狐につままれた気分だった。  靴を脱ぎソファに座る。世羅はまだ白いYシャツと黒い喪服のスラックスをはいていた。  表情は読み取れないいつもの世羅だがどことなく憂いがありほのかに男の色香を漂わせている。 「氷取ってくるよ」  黒龍はそう言って螺旋階段を駆け上がり、氷を器に入れ戻った。

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