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第48話 第七章(7)

 世羅はソファに座ったまま茫然と宙を見つめている。その表情は哀愁が漂っており胸を締め付けられるような感覚に襲われた。  グラスを取り出し、氷を入れ、世羅の前に出したところで、我に返ったようにボトルを開け注いだ。 「嘉納組長は……俺にとっては親父のような存在だった」  黒龍は黙って聞いていた。世羅は警視庁公安の諜報部員だ。その男がヤクザの組長を親のように思っていたと黒龍に告白したのだ。その重さに何も言う事は出来ない。 「10年だ。10年も世羅仁人として生きているとな……自分がもう誰なのかわからなくなる。俺にとって桐生は兄弟のようなものだ。桐生はヤクザの世界では嘉納組長、オヤジの息子、そして俺は桐生の兄弟だ。もちろん現実では蓮が俺の弟だが……」  世羅の憔悴しきった表情を見ていると黒龍の胸は痛くなる。胸を圧迫され、息さえできなくなるようなそんな苦しさだった。 「龍一、俺は自分の命を惜しいと思ったことはない。父が死んだあと、ヴォルコフの尻尾を掴むために追いかけまわしている任務が、復讐に変わっても、生きてる意味がわからないままだ。お前は、自由だ。自分の意思で道を選べばいい。だが一つだけ言っておく。ヴォルコフに会いに行って父親を殺すな」  雷に打たれたような強烈な衝撃を受けた。 「世羅さん……あんた、俺の前で、気弱なふりをしてるのか、それとも今のあんたの本心なのかはわからない。だけど、俺はあんたが生きる意味を見つけられなくて死にたいって思ってたとしても、死なせはしない。あいつを殺すなと言うなら殺さない。会いに行くなって言うなら行かない。世羅さん、いや、仁……そう呼んでいいだろう? あんたを死なせるわけにはいかない!」  感情が炸裂し自分を抑えられなかった。世羅の胸元を掴み、唇を重ねた。ほのかにウィスキーの香りがする。それに酔いながら、舌を絡ませた。  欲情に乗っ取られ、男の本能をむき出しにして何が悪い? そんな風に開き直る。世羅が本気で嫌なら黒龍を殴り倒してでも阻止するだろう。  そう思ったから尚更手加減なしに世羅を挑発した。艶めかしく舌を絡ませあいながら唾液を吸う。全身に熱い血が駆け巡り黒龍の体温を上げた。世羅は抵抗せず黒龍の挑発を受け止めている。うなじにかかった手が熱い。ぐっと引き寄せられ熱い吐息が漏れた。世羅の体に覆いかぶさるように体を重ねるとお互いの全身が密着し、興奮の証が共鳴し合う。  股間を擦りつけるようにしながら熱いキスに没頭した。世羅も積極的に腰を擦りつけ、その強烈な快感に全身に甘い戦慄が駆け抜ける。うめき声は世羅の喉に吸い込まれた。  堪らなく気持ちよかった。このまま続けられたら限界を超えるに違いない。  黒龍は意志をかき集め、唇を離した。世羅を見下ろす。その瞳は欲望でぎらついている。男の野性的な欲情の光に背筋が震えた。 「あんたを護り抜く。絶対。死なせたりしない」  口から出たのは甘い言葉ではなくそんな誓のような闘志だった。 「だったら俺から離れるな」  この時の黒龍はその言葉を嬉しく受け止めた。何か世羅と繋がったような気がしたからだ。体ではなく心のある部分で。 「あんたが望むなら」  そう言うと黒龍はまた唇を重ねた。世羅がショートパンツを引きずり下ろすと、尻を直に鷲掴み揉み始めた。うめき声は世羅の口の中に消え去る。黒龍も世羅のボトムのベルトを緩めると、スラックスと下着を一気に引きずりおろした。興奮に屹立した雄が重なり合う。お互いを擦りつけるように黒龍は腰を振った。世羅の指が後孔を撫で摩る。背筋に甘い震えが走った。

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