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第57話 第八章(6)

 激しい劣情が黒龍に火をつける。舌を絡ませ、吸い付きながら淫靡なキスの間にネクタイをほどきシャツのボタンを外していく。世羅も黒龍に同じことをした。お互いに切羽詰まっているように早急に着ているものをはぎ取る。  世羅の方が先に唇を離し、黒龍の首筋に舌を這わせる。ドラゴンタトゥーに辿り着くとそれに歯を立てては舐めることを繰り返しながら、乳首に向かっていく。  そこを吸われた時、黒龍の口から嬌声が漏れた。強く吸われ、その快感に背中がしなる。ビクンと男根に力が増し、屹立する。スーツのスラックスが窮屈そうに盛り上がった。丁度陰嚢の裏側の感じる場所に世羅の屹立が押し付けられている。その感触にさえ身悶えしてしまいそうなほど感じていた。 「も、もう、我慢できない……仁……ほ、ほしい」  黒龍は自らベルトを外し、スラックスのボタンを外してファスナーを下げた。下着ごとそれを脱ぎ去ると、今度は世羅のベルトを外し始める。  世羅はされるままじっと黒龍を見つめていた。 「そんなに焦るな。俺は逃げも隠れもしない」  世羅の声は楽し気だった。 「ああ、知ってる。俺が一人堪らなくなって焦ってるだけだ」  世羅の浅黒い逞しい男根を目にするとごくりと喉が鳴った。黒龍は欲望のまま、世羅の股の間に膝をつくと、それに手を添え、口に含んだ。  世羅が鋭く息を吸う。次第に荒々しくなる息遣いに黒龍は煽られ、夢中で世羅の雄を舐めしゃぶった。  口内で世羅の雄が膨らみ硬くなったのを感じ我に返る。黒龍の方が早く繋がりたくて切羽詰まっていた。世羅にしてみれば、淫口でも欲望を解放することが出来るのだから同じことだ。繋がることを切実に望んでいるのは自分だけかもしれないという乙女のような発想を黒龍は追い払った。欲望に素直になることを隠す必要はない。  息を切らしながら、力強く屹立している熱い男根から口を離すと、黒龍はその上にまたがった。胎内の奥が疼く。世羅が欲しくてたまらなかった。アナルの入り口に世羅の熱く濡れた先端をあてがい、ぎゅっと手で押し込んだ。それは簡単にするっと内部を侵略する。  世羅の腰が突きさすように打ち付ける。黒龍はもう何も考えられなくなった。ロデオのように、暴れる馬に翻弄され、体が踊り狂う。目の裏に星が飛ぶほどの快感が突き抜けては嬌声が漏れた。  夢中で淫靡な快楽の中でもがき、喘ぐ。  こんな風に快楽に従順に自分をここまでさらけ出したのは初めてだった。切ない感情が押し寄せてきて泣きたい気持ちになる。  そんな自分に戸惑いながらも、黒龍は愉悦に呑まれていった。  脳が溶かされ、すべての感覚は快楽の中に引きずり込まれていく。世羅の上にまたがり激しく腰を振り身悶えながら、黒龍は嬌声を上げ、我を失っていた。  喘ぎ空気を吸ったその時、微かな空気の動きを、感じた。女の香水の匂いだ。甘く妖艶な匂いに五感が研ぎ澄まされた。  黒龍は目を見開いた。一瞬にして世羅から体を離し、全裸で世羅の前に立ちふさがる。  目と鼻の先に女の冷たい視線があった。

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