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第71話 最終章(3)

 世羅が舌を押し込んで来て今度は黒龍の口内で絡み合わせる。巧に避けながら、世羅の舌を吸い甘く噛む。世羅の方が先に黒龍の服を脱がし始め、つられるように黒龍も世羅のスラックスのベルトを外す。薄手のニットの下のシャツを引っ張り上げ指を肌に滑らせる。知っている感触に安堵し、また歓喜が込み上げてくる。  涙が溢れだしそうになるのをこらえるのに必死だった。嗚咽が込み上げ、黒龍は唇から離れた。お互いの唾液が糸を引き差し込む光でキラキラと輝いている。  世羅が上体を起こし、自分で服を脱ぎ始めた。その後黒龍の服を脱がせる。今度は世羅が黒龍を押し倒し覆いかぶさる。重なり合った肌の熱に黒龍は歓喜のため息をついた。目尻からは涙が零れ落ち髪を濡らしている。  世羅が目尻の涙を舐めとった。ドラゴンタトゥーをなぞる指はまるで愛しむように優しい。ドラゴンの頭を撫で頬を辿り顎を愛撫するように撫でる。黒龍は自然と腰を擦りつけるように振っていた。痛いくらいに張り詰めた雄が世羅の熱い楔に擦れるたび硬く反り先端から涙を溢れ出させ、まるでここでも歓喜にむせび泣いているように思えた。 「お前の龍に会えた。やっと……だ」  熱いため息が敏感な乳首にかかる。以前にも好んでそうしたように世羅は大きく口を開けドラゴンとキスするように黒龍の胸に吸い付いた。舌でなぶり、皮膚を甘く噛む。ドラゴンとまるでディープキスしているみたいだ。その燃えるような愛撫に黒龍の体に火が付く。感度が上がり、悶えるように体をくねらせ股間を擦りつける。汗が吹き出し喘ぎ声がとめどなく漏れた。 「くぅ……ああっ……じ、仁……仁……」  世羅の名を呼ぶだけで快感が膨れ上がる。世羅の唇が肌を散策するように乳首から腹部に移動する。そして黒龍の欲望を掴むと、アイスキャンディーを舐めるようにしゃぶり始めた。 「ふぅ……くぅううっ……だ、だめだぁぁぁ……し、しなくて……いい……か……ら……ああっ」  肘をつき上体を起こし、空いている方の手で世羅の頭を押すが、あまりの快感で力が入らない。ペニスをしゃぶる世羅の扇情的な表情に興奮させられ魅入ってしまう。口の中に含まれるその熱さに恍惚となった。  ずちゅ、ずずっ―― 「うっ……くぅ……はぁ……ぁ……ぁぁ」  淫靡な音と喘ぎ声が重なる。  ドクドクと血流が股間に集まって溶けそうなほど熱くなり、全身から汗が噴き出した。 「も、もうダメだっ……い、いくからっ――じ。じんっ!」  嬌声と共に黒龍の腰は激しく上下した。世羅の喉奥に突き刺すように動いてしまう。目がチカチカし、荒々しい息遣いで胸が上下している。世羅が苦し気な声を出したのは一瞬で、黒龍が吐き出した精を嚥下するとそのままいとおしむように舐めしゃぶる。  黒龍の視線は世羅にくぎ付けだった。夢中で己の雄を舐めしゃぶる男の姿に興奮を覚えないわけがない。その男を失くしたら生きる意味さえ見つからないと本気で感じた、最愛の人だ。  ヴォルコフのことが脳裏に過った。こんな時に思い出さなくてもと思う。落ち着いてくると、母を亡くしたヴォルコフは、最愛の女性を失くし生きる意味さえ失っていたに違いない。息子の中に愛した女の血を見て、彼女の血を受け継ぐ子を残しておきたいと考えたのも今になって思えばあり得るかもしれない。自分の身に起こったことを考えれば許せるまでにはいかないが……。  ずちゅっと恥ずかしくなるような音を立てて世羅が口を離した。額は汗ばみ、胸にも汗の滴が溜まっている。男の色香が溢れだしているその扇情的な姿に黒龍の思考は止まった。  じろりと睨まれ、のしかかるようにして押し倒される。

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