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第72話 最終章(4)
「何を考えていた? 余計なことを考える余裕があるとはな……。まぁいい、今から思い知らせてやる」
世羅の気迫に圧倒されている間に膝の裏に手を添えられ持ち上げられ大きく開脚させられる。今度は後孔に熱い息遣いを感じ羞恥でかっと体温が上がった。
こんな風に女のように脚を持ち上げられ、そこを凝視されるのには慣れていない。バックの体勢でさらけ出すよりも羞恥を覚えた。
ぬるっとした感触に悲鳴のような声が漏れる。舌で孔をつつかれ、舐めまわされる。腕で口をふさぎ嬌声を抑え込むも、余計に感度が上がるだけだった。
腰を震わせ、体をくねらせ悶え続ける。柔らかくなると舌が入口から内部へ押入ってくる。官能の涙が首を横に振るごとに飛び散った。全身が震え、どうしようもできないほど痺れるような快感に翻弄される。
ペニスを握られ、扱かれながら、舌を孔に差し込まれ黒龍は狂ったように悶えた。
「も……もう……だめ……だっ……きて……仁……欲しい……仁」
切羽詰まった喘ぎ声をやっと聞き取った世羅が、顔を上げた。視線がぶつかる。世羅がにやりと笑った。その表情に黒龍は完璧にノックアウトされた気分だった。
愛おしくてたまらない。俺の男だ。この人は、俺の男。俺だけの。
愛しさと独占欲に支配される。
「お前は俺のものだ。一生。これからずっと、俺と一緒に生きていくんだ」
黒龍が考えていた言葉を世羅は言った。魂で共鳴したようなそんな感覚を覚える。
「ああ、ずっと一緒だ」
黒龍の感動で震える声を聞きとった世羅が欲望の先端をあてがい、ぐっと腰を押した。
ずぶっと侵入してきた熱い塊に黒龍の背筋が仰け反る。
世羅が片手を重ねてきて指を絡ませしっかり握りしめ合う。もう片方の手で腰抑えるとずんと腰を打ち付け最奥を突いた。
脳天を突き抜けるような衝撃が黒龍を襲う。それは経験したことのない強い快感だった。
ずんずんずんと、力強く奥を突かれるたびに感じる衝撃に声さえ出ない。
「俺を感じるか? 龍一、俺をお前の中で感じるか?」
黒龍は言葉を発することが出来ない代わりに何度もうなずいた。
握りしめ合っている手に力がこもる。世羅が肌を重ね密着するとさらに激しさが加速した。全身が上下に揺らされ、黒龍は世羅の背中に空いている方の手を回し抱き付いた。
汗で滑る肌にしがみ付くように爪を立てる。綺麗に切りそろえられている黒龍の爪では痕は残らない。快感に沈んだ恍惚とした意識の中、黒龍は、無意識のうちに世羅の背中に痕を残そうとしていたのかもしれない。
本当に重なり合ったという証を残すために。
「くぅ……うう……龍一」
世羅の全身が大きく震えた。熱い迸りを胎内に感じると幸福感が押し寄せて来た。目をつぶると世羅の匂いがした。その匂いに安堵を覚え顔が緩む。多分ほほ笑んでいたに違いない。
「そんな嬉しそうな顔をするなよ」
そう言って世羅は黒龍に優しいキスをした。
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