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再会
長いフライトを終え、期待はゆっくりと滑走路へ降り立った。
シートベルト着用サインが消えると、機内には安堵の空気が流れる。
陽彩は大きく伸びをした。
「遠すぎ」
窓の外には、どこまで広がる青空。見慣れない景色に、自然と胸が高鳴る。
荷物を受け取り、到着ロビーへ足を踏み入れる。聞こえてくるのは英語ばかりだった。
行き交う人の多さも、日本とはどこか違って見えた。
「すげー」
思わず声が漏れる。
その全てが新鮮だった。
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、一人の男性が陽彩へ近付いてくる。
胸元にはロサンゼルス・ノヴァスのエンブレム。
「Mr. Aizawa?」
陽彩は慌てて姿勢を正した。
「いえーす、いえす!」
男性は笑顔で手を差し出す。
「Welcome to Los Angeles.」
握手を交わした陽彩は、照れくさそうに笑う。
「よろしくお願いしまーす!」
スタッフに案内され、そのまま空港をあとにする。
車へ乗り込むと、高層ビルが立ち並ぶ街並みが窓の外へ流れていく。映画で何度も見た景色。今はその全てが現実だった。
しばらく車を走らせると、スタッフがフロントガラスの向こうを指差した。
「There it is.」
「え?」
陽彩は顔を上げる。
視界いっぱいに大きなスタジアムが現れた。
青空に映える外壁。
堂々と掲げられた球団のロゴ。
そのスケールに、思わず息を呑む。
「すげぇ!!!」
車はゆっくり球場の敷地へ入っていく。
選手専用のゲートを抜け、クラブハウスの前で停車した。
「We’re here.」
「せんきゅー」
キャリアケースを降ろし、陽彩は目の前の建物を見上げる。
ここが、これから自分の場所になる。
「よしっ」
キャップをかぶり直し、深く息を吸う。
そして、クラブハウスの扉へ向かって一歩を踏み出した。
クラブハウスの扉が開く。
ひんやりとした空気が頬を撫でた。
廊下には英語が飛び交い、スタッフたちが慌ただしく行き交っている。
日本とは違う雰囲気に、陽彩は思わず辺りを見回した。
スタッフのあとに続きながら歩いていく。
壁には歴代選手の写真や優勝トロフィーが飾られ、その一つ一つがこの球団の歴史を物語っていた。
「こちらです」
スタッフが一枚の扉の前で足を止める。
「チームメイトが待ってます」
扉のノブへ手を掛ける。
ロッカールームへ一歩足を踏み入れる。
談笑していた先週たちの視線が、一斉に陽彩へ集まる。
「Hi.」
陽彩は照れくさそうに笑いながら、大きく手を振った。
「My name is Aizawa. Nice to meet you!」
片言の英語に、ロッカールームから笑いがこぼれる。何人かの選手が笑顔で近寄り、握手を交わしていく。
その輪の少し奥。
ロッカーに寄りかかったまま、陽彩を静かに見つめる男がいた。
高校時代と変わらない無表情なのに、その姿はあの頃よりもずっと大人びて見えた。
陽彩は目を見開く。
「……凜っっ!!!!」
次の瞬間には駆け出していた。
勢いそのまま飛びつこうとした、その時。
ぐいっと大きな手が陽彩の胸を押さえた。
「汗」
高校の時と変わらない、短い一言。
陽彩はその場でぴたりと止まり、不満そうに頬を膨らませる。
「えー、俺に会いたがってたくせに」
凜は小さく息を吐く。
その様子を見ていたチームメイトが面白そうに笑った。
「Who’s he?(彼は誰なんだ?)」
凜は迷うことなく答える。
「My battery.(俺のバッテリーだ)」
ロッカールームが一気に盛り上がる。
陽彩は一瞬きょとんとしたあと、ぱっと笑顔になる。
「お、マイバッテリーって言った?」
凜は短く頷く。
「やっぱり!」
陽彩は得意げに周りを見渡した。
「高校の時から俺ら最強バッテリーだったんだよ」
英語では伝えられない。
それでも身振り手振りを交えて話す陽彩に、チームメイトたちは笑いながら頷いていた。
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