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変わらない距離

紅白戦を終えたクラブハウスには、まだ試合の熱気が残っていた。 シャワーを浴び終えた選手たちが思い思いに談笑する中、一人の選手が声を上げる。 「Hey! We should throw Aizawa a welcome party tonight!(おい! 今夜、藍沢の歓迎会をやろうぜ!)」 「Sounds good!(いいね!)」 あっという間に周りも盛り上がり始める。 英語が飛び交う中、陽彩だけがきょとんと首を傾げた。 「凜」 「なに」 「今なんか盛り上がってるけど、なに?」 凜はタオルで髪を拭きながら答える。 「お前の歓迎会だって」 陽彩はパッと顔を輝かせた。 「まじ?」 嬉しそうに辺りを見回す陽彩を見て、選手たちも笑顔になる。言葉は通じなくても、その反応だけで十分だった。 「おー、ブラザー! Thank you! Thank you! I love you!」 陽彩は満面の笑みで一人の選手へ駆け寄ると、両肩をガシッと掴み、そのまま頬へ軽くキスを落とした。 「Whoa!」 驚いた選手が思わず笑う。 陽彩は気にする様子もなく、次々と選手たちの頬にキスを落としていく。 歓迎会の主役とは思えないほど自由奔放な行動に、クラブハウスは大きな笑いに包まれた。 そんな様子を少し離れた場所から見ていた凜は、小さくため息をついた。 その姿を見つけた陽彩は、にやりと笑う。 「いたいた」 軽い足取りで近付くと、何の躊躇もなく凜の肩へ腕を回した。 「凜もしてあげよっか?」 そう言って、自分の頬を指差す。 凜は一瞬だけ陽彩を見下ろし、無言で陽彩の額を手のひらで押した。 「いらない」 「えー、なんで?」 陽彩は不満そうに唇を尖らせる。 「みんなにはしたのに?」 「だからだ」 短い言葉に、周囲の選手たちが吹き出した。 「Asakura’s jealous!(朝倉、嫉妬してるぞ!)」 「Ha! Look at him!(ほら見ろよ!)」 からかうような声が飛ぶ。 陽彩は英語が分からないまま首を傾げる。 「なんて?」 凜は表情ひとつ変えずに答えた。 「しらん」 「嘘つけ!」 陽彩は笑いながら肩を軽くぶつける。 そんな二人を見て、クラブハウスには再び笑い声が響いた。 誰もが思っていた。藍沢陽彩と朝倉凜。 長い年月が空いていたとは思えないほど、二人の距離は何一つ変わっていなかった。 むしろ、その距離感に選手たちの方が驚いているようだった。 「Alright, let’s go!(よし、行こうぜ!)」 誰かの一声で、選手たちが一斉に荷物を持ち始める。 「Party!! Party!!」 「Aizawa! Hurry up!(藍沢、早く来い!)」 陽彩はパッと顔を上げ、大きく手を振る。 「おー! 今行く!」 英語か日本語かなんて関係ない。楽しそうに笑う陽彩を見て、選手たちもまた笑う。 凜はその背中を静かに見つめ、小さく息を吐いた。 「……相変わらずだ」 そう呟く声は、どこか少しだけ優しかった。

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