12 / 16

会いたかった?

歓迎会がお開きになる頃には、店の外はすっかり夜になっていた。 選手たちはそれぞれ笑顔で手を振り、帰路につく。 「See you tomorrow!!」 「Good night!!」 陽彩も負けじと手を振った。 「ばいばーい!」 その直後。 「おっ、と」 ふらり、と身体が傾く。 咄嗟に伸びた腕が、その身体を支えた。 「飲みすぎ」 低い声に、陽彩はへらっと笑う。 「わ! 愛しの凜くんじゃーん」 凜は小さくため息をつくと、周囲へ視線を向けた。 チームメイトとの一人が苦笑いしながら肩をすくめる。 「Asakura, can you take him to the hotel?(朝倉、ホテルまで送ってやってくれるか?)」 凜は短く頷いた。 陽彩はそのやり取りを聞き流しながら、凜の肩へもたれかかる。 「どこ連れていく気?」 「お前のホテル」 「へぇ」 納得したのかしていないのか分からない返事をすると、陽彩はそのまま凜の肩へ頭を預けた。 「……重い」 「我慢、我慢」 そう言った直後、また足がふらつく。 凜は呆れたように息をつきながら、その腕をしっかりと支えた。 「……」 ロサンゼルスの夜風が、静かに二人の間を吹き抜けていった。 凜は陽彩を支えたまま、ゆっくりと歩き出す。 歓楽街の賑わいが少しずつ遠ざかり、代わりに車の走る音だけが耳に届いた。 陽彩は凜の肩へ体重を預けたまま、小さく欠伸をする。 「ねんむっ」 「もう着く」 「んー」 返事とも寝言ともつかない声が返ってくる。 その様子に、凜は小さく息を吐いた。 数分後。 二人は球団が用意したホテルの前へ辿り着く。 高層ホテルのエントランスは柔らかな証明に照らされ、昼間とは違う落ち着いた雰囲気を漂わせていた。 自動ドアを抜けると、フロントスタッフが凜の姿に気付き、軽く会釈をする。 凜も短く会釈を返し、そのままエレベーターへ向かった。 「……何階だ」 陽彩はポケットを探り、小さなカードキーを取り出す。 「んー……これ?」 凜はカードキーを受け取ると、部屋番号を確認し目的の階のボタンを押した。 静かに閉まるエレベーターの扉。 鏡に映る二人の姿を横目に見ながら、陽彩はふっと笑う。 「俺に会えて嬉しい?」 陽彩は鏡越しに凜を見上げる。 凜は少しだけ視線を向けると、淡々と答えた。 「だったら何」 一瞬、陽彩が目を丸くする。 「え?」 「来るの遅いんじゃないか」 それだけ言って、凜は前を向く。 陽彩は数秒ぽかんとした後、照れくさそうに笑った。 「俺も」 その二文字だけだった。 高校を卒業してから、何年も会えなかった。連絡を取ることもほとんどなく、それぞれが違う場所で野球を続けてきた。 それでも、会えばあの頃と変わらない。 エレベーターが静かに目的の階へ到着する。 扉が開く音が、二人の間に流れた穏やかな空気をそっと現実へ引き戻した。

ともだちにシェアしよう!