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約束の翌朝
エレベーターが静かに目的の階へ到着する。
扉が開くと、凜は先に一歩踏み出した。
陽彩もふらつきながら、そのあとをついていく。
「こっち」
「はーい」
廊下は驚くほど静かだった。
柔らかな照明だけが足元を照らしている。
凜はカードキーに書かれた部屋番号を確認しながら歩き、目的の部屋の前で足を止めた。
「ここ」
カードキーを差し込むと、小さな電子音が鳴る。
ドアがゆっくりと開いた。
「おお」
陽彩は部屋を覗き込み、小さく目を丸くする。
「広っ」
キャリーケースもまだ開けられていない真新しい部屋。
大きなベッドに、窓の向こうにはロサンゼルスの夜景が広がっていた。
陽彩はフラフラと部屋へ入り、そのまま窓際まで歩いていく。
「はは、こんな綺麗な夜景を凜と見れるとか最高かも」
窓ガラスに額を預け、嬉しそうに笑う。
凜はその背中を静かに見つめた。
「夜景ならいつでも見れる」
「うん?」
「いつでも見に行けばいい」
陽彩はゆっくりと振り返る。
数秒、凜を見つめたあとふっと笑みをこぼした。
「そっか」
嬉しそうに呟くその声は、どこか照れくさそうだった。
「試合に勝つ度に、夜景見に行こうよ」
凜は窓の外へ視線を向ける。
「ああ」
短い返事だった。それでも陽彩には十分だった。
陽彩は夜景へ視線を戻し、小さく笑う。
「……やっぱ凜だなぁ」
ロサンゼルスの夜景は、静かに二人を照らしていた。
◇◇◇
翌朝。カーテンの隙間から差し込む眩しい日差しが部屋を照らしていた。
ベッドの上では、陽彩が毛布にくるまったまま気持ちよさそうに眠っている。
枕元のスマートフォンが何度も震えた。それでも本人は微動だにしない。
数分後。ようやく寝返りをうった陽彩が、ぼんやりとスマートフォンへ手を伸ばす。
「んっ、」
画面を見た瞬間。
「……え?」
数秒、思考が止まる。
「やっべぇぇえ!!」
勢いよく飛び起きる。
「遅刻したあぁぁぁぁ!!!」
ベッドから転げ落ちそうになりながら着替えを掴み、慌ただしく部屋中を駆け回る。
「え? アラームは?」
スマートフォンを見る。画面には、止めた覚えのないアラームの履歴がずらりと並んでいた。
「寝ぼけて消したんだわ、」
頭を抱えたまま、陽彩は大慌てでホテルの部屋を飛び出した。
メジャー入って早々、まさかの大遅刻。
「まじやべー、監督に殺される!」
エレベーターのボタンを連打しながら、その場でそわそわと足踏みをする。
ようやく扉が開くと、陽彩は飛び込むように乗り込んだ。
「頼むから怒らないで! みんな!」
そう願いながらホテルを飛び出し、球場へ向かって全力で駆け出した。
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