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【1部】第3話 喪失前夜

 どれだけの回数を重ねたのだろう。  理一に髪を撫でられながら、喉奥に理一のものを咥えて必死に彼を慰めている。この行為ももう何回したか分からなかった。 「コウくん、フェラ上手になったね」  ベッドに腰掛け、奉仕を当たり前のように自分のものとする理一の様はまさに支配者のそれだった。コウの髪を撫でる手つきは、お気に入りの〝物〟に触れるかのように無機質で、冷たい。理一は、日に日にコウを辱めることに中毒性を見出していた。 「こんなふうに男を喜ばせる術を着々と覚えて、自分がなんのために生まれたのか少しは分かってきたんじゃない」  屈辱を与えるための言葉なんだろうが、何も思うことがなかった。実際に、自分はこの男の復讐心を埋め、快楽を与えるための人形として存在している。間違いなく、自分はこの人の玩具だった。  理一が快感で小さく呻くと、ようやく喉に熱い精が吐き出され、それは胃の中へと注がれる。ひとしきり出し終えると、喉を圧迫していた男根をずるりと抜き去られ、コウはゲホゲホと咽せてから口元を手の甲で拭った。 「そういえば、今日は随分と遅かったね」 「……残業だったから」 「へぇ」  理一がベッドから立ち上がり、上から見下ろしてくる。自分より頭ひとつ分は高い理一が立ち上がると、自分の小ささを思い知らされる。愕然と見上げると、二の腕を乱暴に掴まれてベッドに突き飛ばされた。 「コウくん、仕事辞めよう」  覆い被さり、高圧的でもって美しい顔が微笑む。コウは言われたことを咀嚼し、現実的に考える。考えている最中に下半身を押し開かれ、無理矢理奥まで突っ込まれる。 「でも、……それだと生活できない……っ」 「大丈夫、僕が保障するから」  ──保障って、どうやって。  問いかけようとすると、それを遮るようにさらなる要求をされる。 「この部屋も引き払って」  足場をひとつひとつ崩されていくようだった。 「そんで、僕のマンションに住もう」  理一は微笑みながら提案してくるが、それはもはや提案のフリをした命令だった。  身体の中を埋めながら、動くことなく、ただそこに存在することを知らしめて、対話にだけ集中させられる。  コウは熱い息を吐いてから。 「監禁するの?」 「出歩きたければ出歩けばいいよ。でも、帰って来なければどうなるか……分かるよね」  柔らかい癖っ毛を一束掴まれ、するりと離すと頭を撫でてくる。 「ちゃんと帰って来れる?」  コウは、問いかけられた時に理一の望む言葉しか口にしないようにしていた。だから、答えは決まっていた。 「う、ん……」  律動が開始される中で、短く肯定する。  これからこうやって激しく消耗させられた後に労働をしなくて済むのは良いなと、ポジティブな気持ちになっている自分もいた。  そうして、自分の世界が完全に閉じていく。この人が、自分にとっての全てになってしまう。

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