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第12話 発熱

「お前ら何いちゃついてんの」  後から来た他の生徒に声をかけられて、慌てて体を起こした。 「違っ、――ジェスごめん。わかってなかった」  脚を引いて膝立ちになると、ジェスが唸る。 「……ねえよ……」 「――ごめんって……」  肩に手を置いてジェスの顔を覗き込むと、また頭上から声が降ってきた。 「なんだよ、機嫌悪いな」 「……うるせえ」  不機嫌な声がより低くなって、どうしたものかと顔を上げる。  そこにいたのは騎士科の生徒で、通りすがりざまに声をかけてきたようだった。  目があって、眉をひょいと上げられる。 「上から押しつぶしていいんだぜ。そいつ面白いくらい潰れるから」  生徒はそう言い残すと、さっさと鍛錬場へと行ってしまった。 「――えぇ……」  手のひらの下で、ジェスが大きく息を吐いた。  肩から力が抜けて、少しだけ顔が傾けられる。 「――グエン、さっさと乗れよ」  ――ええ!  促されて、おっかなびっくりジェスの背中に体をくっつける。  そのままゆっくりと体重を預けると、先ほどと同じように体が倒れていき、  やがてグエンの体はすっかりジェスを押し倒していた。 「――は……ぁ」  体の下、伸びながら息を吐くジェスがいて、  思わずごくりと唾を飲み込む。 「グエン、……もっと」  ――ああ、くそ!  やけくそになって、ぐいと体重をかけた。  普段、他の連中とこんなことをしているのかと思うと、頭に血が上りそうな、腹の奥がねじれるような、おかしな感情になる。  ただの、柔軟なのに。  もやもやしたものを吐き出したくて、腹の底から大きく息を吐き出すと、  体の下でジェスが身じろぎをした。  冷えた空気の中、二人の間だけやたらと熱い気がする。  自分の呼吸がやたらと気になって、出来るだけ浅く、ジェスに息がかからないように息をする。 「……どう、だ?」  落ち着け。  落ち着け、俺。  目の前のジェスの頭に、うなじに、どうしたって目がいってしまう。   「ん……。もっと、ゆっくり」 「――お前……!」  ささやくようなジェスの声に、目の前が白くなるかと思うほど息が詰まって、  それでも、言われた通りに、ゆっくりと体重を戻し、またのしかかった。  ――拷問だ……。    また目の前に現れたうなじ。  ついまじまじとみてしまって、髪の生え際、隠れるようにひそむほくろに目線が吸い込まれた。  こんなところに、ほくろがあるのか―― 「グエン?」  名を呼ばれて、焦点が戻ってきた。  ――あと少しで、触れてしまうところだった。 「――あ、……重かったか」  ゆっくりと体重を戻して、ジェスを起こしてやる。  ほう、と体を楽にするジェスを見て、せめて自分は柔軟を済ませておいてよかったと思ってしまう。  このノリでジェスにのしかかられたら、もう、色んな意味で多分無理だ。  脚を戻して、膝を立ててぶらぶらと揺するジェスに、次は?と声をかける。 「ああ、……横」 「――ああ」  次は体側を伸ばすつもりらしい。  体側。 「――え、また俺体重かける?」 「……お前ら、普段どうしてんの」  言いながらまた脚を開くジェスに、途方にくれて呟いた。 「お前らと一緒にすんなよ……。どこまで潰れるのかと思った」 「こっち」  両腕を伸ばして、右脚に体を沿わせるジェス。 「上、乗って」 「――っど、こに」  チラとこちらを見たジェスと、目があって、  自分が情けない面をしていることをいやというほど自覚した。 「ここ」  ジェスが、脇腹から肩にかけてを反対の手でなでる。  そのまま目線で促されて、おずおずと近寄って、  目を離せなくて、そのまま、覆いかぶさった。  冷たい床に片手をついて、ゆっくりと体重をかける。  呼吸が聞こえそうなほど顔が近づいて、  やけに熱い吐息が、ふっと不自然に途切れて――  一瞬、ジェスの目の焦点が合わなくなった。 「……ジェス?」  次の瞬間、支えていた体の力が抜けて、瞼が落ちた。 「ジェス、――ジェス!」  頬に触れ、それから首元にも触れる。    熱く汗ばんだ肌。  どくどくと脈打つ血管。   「――熱、出てんじゃねえか……っ」  

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