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第21話 雲母
ノックの音が響き、店員が箱を掲げて室内へ入ってきた。
店主がそれを受け取り、店員が脇へ下がる。
「お客様。臍飾りとして良いサイズの、――揃いの石があるものは、こちらの通りでございます」
店主が、箱から薄い引き出しを抜き出し、グエンの目の前に並べた。
一つ、二つ。――三つ目はまだ箱の中に収まったまま。
引き出しの中に収められた色とりどりの石たちは、
どれも鮮やかに色づいて、キラキラと部屋の明かりを跳ね返していたが、
どれもあまりに鮮やかすぎて、へその中に収まっている様子を想像し、何か違う、と感じた。
「ああ……」
思わず手のひらで額を覆う。
この石を収めるのは、そのへそではない。
「――お気に召しませんでしょうか?」
「いや、――いや、そうじゃないんだ……」
額から手を離して、背もたれに体を預ける。
へそは、――ダメだったかもしれない。
「こちらは、貴石を主に集めたものでしたが、こちらに――」
そう言いながら店主は三つ目の引き出しを開けて、グエンの前へと押し出した。
「こちらは、同じ石でも少しランクの低い石でございますが、
お色味としては落ち着いたものも多いですので、お気に召すものがあるかもしれません」
そう言われて、目線を落とす。
ちら、と目の端に映った石たちは、同じように色とりどりの姿をしていたが、
どれも少しずつぼんやりとした柔らかな光を湛えて、確かに色合いも落ち着いていた。
その中の一つ。
ややオレンジ色がかった、褐色の輝きに目を奪われる。
気づけば、背もたれから背中が離れていた。
「――店主。……この、茶色の石は、何だ?」
箱の隅、木箱の脇で、木目に隠れるようにしてそこにあった石は、
透明の石の中、ややオレンジがかった茶褐色のきらめきが何層にも重なって、じっとしていた。
その石の名は、マイカクォーツ。
水晶の中に、褐色の雲母のカケラを内包した、少し珍しい色合いの石だという。
じっとしていると、ただの内包物の多い屑石のようなのに、
動かしてみると、中の雲母がきらきらと光を跳ね返し、温かい色合いをにじませる。
魔力を貯めることも可能で、魔道具に添える石として問題ないとのことだったので、グエンは店主にその石で一揃い仕上げてくれるように依頼した。
できるだけ、身につけた時に邪魔にならないように。
引っかかりやとがりがないように仕上げるよう約束してもらい、引き取りの日取りを確認した。
思ったよりも長く時間を使った素体選びの後、店主の手を借りて外套を身につけ、襟巻きを受け取った時に、店主が柔らかく微笑んだ。
「お客様は、このお色味がお好きでいらっしゃるのですね」
手渡された襟巻きは、――ジェスが手ずからグエンに巻きつけてくれた、襟巻きは、
先ほど選んだ石と、同じ色合いをしていた。
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